サルモネラが産生するγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(ggt)は、昨年度までの解析にてサルモネラの病原性との関連性が無いことが示唆される結果を得た。そこで、平成25年度ではggtのサルモネラにおける性状について検討を行った。はじめに、サルモネラが産生するggtの至適産生条件について検討を行ったところ、サルモネラの増殖が盛んな温度である37度よりも低温条件(20度)での培養においてGGT活性が増大することが明らかとなった。また、GGT活性は本研究にて解析を行ったサルモネラ菌株間において大きな差が認められたが、これは血清型の違いによるものではなく、菌株ごとにGGTタンパク質の発現量に違いがあるものと推測される。 次に、低温条件下にてGGT活性が上昇するメカニズムを検証することを行った。細菌の遺伝子発現において低温条件下で活性化されるメカニズムとしてnon-coding small RNA(sRNA)が介在する経路の存在が知られており、本研究ではこの経路について着目し、解析を行った。そこで、多くのsRNAの機能発現に必須であるRNA chaperonであるHfqをコードするhfq遺伝子を破壊した遺伝子欠損株を作製しGGT活性を野生株と比較したところ、著しいGGT活性の現象が認められ、hfq遺伝子を相補したサルモネラではhfq欠損株と比較してGGT活性の回復が認められた。この結果より、低温条件下におけるGGT活性の上昇はggt遺伝子発現がsRNAにより上昇することが示唆された。サルモネラのsRNAの1つのsRNAであるdsrAの有する機能に温度制御に関与するとの報告があるので、dsrA遺伝子を欠損した菌株を用いて解析を行ったところ、野生株よりもGGT活性の減少は認められたが、hfq欠損株ほどの減少は認められず、他のsRNAの関与が推測された。
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