研究課題
リステリアは宿主細胞内に侵入後、菌体表面に発現したActAタンパク質により宿主タンパク質を積極的に集積することで宿主の細胞骨格を再構築し、その推進力を利用して細胞内を運動する。ActAタンパク質が菌体表面に発現しない、または菌体表面に発現していても機能的に宿主タンパク質を集積できない場合、菌体が宿主細胞のユビキチン修飾系により直接ユビキチン化される。これが発端となり、ユビキチン化されたリステリアは細胞内分解系の一つであるオートファジーにより認識され、選択的に捕捉・分解される。そこで本研究では、宿主タンパク質を集積できないリステリア菌体側のユビキチン修飾を受ける分子や宿主側のユビキチン修飾分子の同定および解析を試み、ユビキチン修飾系の宿主細胞の自然免疫システムにおける役割の解明を目的とした。本年度は、前年度までに得られた菌側候補因子についてさらに解析を行った。菌側候補因子について、リコンビナントタンパク質を作製し、これらを用いてin vitroで直接的なユビキチン化を観察することができた。しかし、いずれも宿主細胞内での菌体表面における発現は観察されなかった。また、酵母Two-Hybridシステムにおいても菌側候補因子と結合する宿主タンパク質は確認されなかった。以上の結果から、菌体表面に発現する分子が直接宿主細胞のユビキチン修飾系に認識されているのでなく、ActAタンパク質がない、または機能しない場合に菌体表面に結合する宿主細胞タンパク質を通して間接的にユビキチン化されている可能性が高いことが判った。
2: おおむね順調に進展している
本研究では当初、菌体成分および宿主細胞成分の両方を対象としており、その候補分子の数が膨大であった。本年度の結果より、菌体側候補分子が直接的なユビキチン化の標的となっていない可能性が強く示唆されたことから、対象を宿主細胞側の因子に絞ることができた。また、これらの遺伝子発現解析のためにリアルタイムPCR装置の設置が完了している。
リステリアの感染時における宿主細胞側因子の挙動解析に焦点を当てる。これまでは、リステリアactA変異株のユビキチン化およびオートファジーを最も観察しやすいMDCK細胞を用いていたが、遺伝子導入や遺伝子発現解析時に操作上困難な点が多かったことから、宿主側候補因子の発現ベクターをHeLa細胞など別の培養細胞株に導入し、恒常的に過剰発現させた細胞を用いて解析する。
本年度に細胞内におけるリステリアおよび宿主細胞候補分子の発現挙動の遺伝子解析を行う予定であったが、宿主細胞候補分子に焦点を当てて解析を行うこととした。よって、実験計画の変更により、新たに消耗品等を購入する必要がなくなったため。感染実験に必要な細胞培養用の培地、血清などの一般試薬費用、遺伝子解析およびタンパク質解析用試薬の費用に充当する。
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