研究課題
マクロファージ(Mφ)内で増殖する結核菌は、細胞からエネルギー産生に重要なグルコースを獲得して生命を維持していると考えられるが、菌と宿主との間でどのように糖代謝の調節がなされているかについては不明である。申請者は、これまでにMφの糖代謝に重要なhypoxia-inducible factor-1alpha (HIF-1alpha)に着目し、HIF-1alphaを欠失したMφでは菌の増殖が野生型(WT)に比べて高いことを明らかにした。そこで、本研究では、Mφに発現するHIF-1alphaタンパク質が調節する解糖系代謝とMφ内での結核菌の増殖との関係を詳細に解析した。まず、結核菌感染によるWTマウス骨髄由来MφでのHIF-1alphaの発現を検討した。Mycobacterium tuberculosis感染後12時間でHIF-1alphaの発現が増大し、また加熱処理を行ったBCGを添加した場合も同様に発現が増大した。一方、M. tuberculosisの分泌タンパク質(PPD)は、HIF-1alphaの発現を増大しなかった。また、菌の感染は、HIF-1alpha mRNAを誘導ため、菌体内成分が転写を介て発現を増大する可能性が示唆された。次に、マイクロアレイ法で遺伝子発現を解析したところ、HIF-1alpha欠損Mφでは、WT Mφに比べ乳酸脱水素酵素(LDH-A)およびPDHリン酸化酵素(PDK1)の発現が低下していた。そこで、WT Mφ内での菌の増殖に対して各酵素の阻害剤の影響を検討した結果、LDH阻害剤は、感染後Mφ内の菌数を増大させた。また、液体培地およびMφ内での菌の増殖は、炭素源としてグルコースではなくピルビン酸の利用率の高いことが明らかになった。本研究結果は、結核菌のMφ内での増殖をHIF-1alphaが糖代謝を介して制御していることを初めて明らかにしたものであり、結核菌の新しい治療に結びつく有用な知見であると考える。
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