研究課題/領域番号 |
24790423
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
永井 武 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60418655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細菌感染 / 感染免疫 |
研究概要 |
腸管病原性大腸菌(EPEC)がどのように宿主の免疫系、特にT細胞の分化を制御しているかについて、検討を行った。まず、EPECのマウスモデル菌であるCitrobacter rodentiumを用いて、III型分泌装置によってT細胞分化を制御しているかについて検討した。Citrobacter rodentiumを投与後3週間の後、腸間膜リンパ節からリンパ球を精製しCitrobacter rodentiumで再刺激した。その結果、野生株投与群のみTh2サイトカインの誘導が見られた。また、C. rodentiumに対する抗体価を測定したところ、野生株分はIII型分泌装置欠損株よりTh2型の抗体が有意に高かった。これらの結果から、野生型はIII型分泌装置を用いて、Th2分化を誘導していることが示唆された。また、EPEC、樹状細胞およびナイーブT細胞を用いて、in vivoと同様の現象をin vitroにおいても再現できる実験系を確立した。次に、III型分泌装置から分泌されるエフェクタータンパク質のうち、どのエフェクターがTh2分化を誘導しているかを探索した。様々なエフェクター変異株を用いた結果、IE6という領域にコードされたnleEおよびnleBが、Th2分化に関わっていることを突き止めた。また、これらの遺伝子は、樹状細胞からのIL-12やIL-27の産生を抑制することで、Th2を誘導していることが示唆される結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若干の遅れはあるものの、おおむね予定通りの進行具合である。やや遅れいてる理由として、当初は、Th2分化を誘導している因子は1種類ではないかと予想していたが、検討の結果、2種類の因子が関わっていた。そのため、これらを同定するまでに、必要以上に変異株を作成する必要があり、また、変異株作成が予想以上に困難を伴ったことも、原因の一つであると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、EPECのnleEやnleEによって誘導されるTh2分化が、実際感染においてどのような効果があるかを検討する。特に、Th2サイトカインであるIL-4,IL-5,IL-13などが、C. rodentiumの感染にどのように影響するかは、ほとんど明らかになっていない。そこで、C. rodentiumを感染させるときに、これらのTh2サイトカインをマウスに投与して、感染における影響を観察する。また、C. rodentiumにおいても同様にIE6変異株およびnleEやnleBの相補株を作成し、感染実験を行う。これにより、生体内においてもnleEやnleBがIL-12の産生抑制およびTh2分化に関与しているかについて検討を行う予定である。しかし、当初はCD11c-DTRマウスを用いて、樹状細胞を除去したときのTh分化を見る予定だったが、研究室の都合上困難になったので割愛する。また、Th2分化を誘導するエフェクター分子を特定できたが、当初の予定では、これらの詳細な機能解析を行う予定であった。しかし、今年になって他の研究グループから、かなり詳細な報告がなされてしまったため、この機能解析を行うことを取りやめたため、24年度に未使用額が生じた。そのため、次年度には、EPECがなぜTh2分化を誘導するのかについての追加実験を行うこととした。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、実験で使用する、実験用マウス、サイトカイン測定用のELISA、リコンビナントタンパク質および酵素・試薬類を購入する。具体的には、マウスに投与するサイトカイン類(IL-4, IL-5, IL-13)やIL-4測定用ELISAまたTh2サイトカイン阻害剤などである。 また、通常使用するプラスティック類(ピペット、シャーレ、フラスコ、ディッシュ、チップなど)も常時購入予定。また、研究論文の作成および投稿料などにも使用する予定である。さらに、必要があれば、サイトカインの網羅歴な解析や、マイクロアレイを用いた受託解析にも使用する予定である。さらに、未使用額の分についての追加実験のために、マウス実験においてTh2サイトカインを阻害する薬剤およびTh2サイトカインの中和抗体などの購入や、トランスウェルを購入する予定である。
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