研究課題/領域番号 |
24790424
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
細田 浩司 順天堂大学, 医学部, 助教 (40408662)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TREM-1 / リガンド / 敗血症 / 好中球 / 血小板 |
研究概要 |
TREM-1(triggering receptor expressed on myeloid cells-1)は、好中球や単球・マクロファージで発現し、炎症性サイトカイン産生を促進して炎症反応を増強する。TREM-1の機能を中和抗体などにより阻害すると、敗血性ショックの病態が改善することから、TREM-1は敗血症の病態における炎症反応の増強因子と考えられている。しかし、これまでにTREM-1のリガンドは同定されていない。 これまでにTREM-1が好中球や血小板と結合することから、これら細胞表面にリガンドが発現していると考えられている。そこで本研究では、クロマトグラフィーや質量分析法などを用いて、TREM-1リガンドを分離・同定することを試みる。 まず、TREM-1全長あるいは欠失変異体のC末端にglutathion-S-transferase (GST)を融合したキメラタンパク質を発現するプラスミドを作成した。HEK293およびRAW264.7細胞に発現プラスミドを導入し、TREM-1-GSTおよび変異型TREM-1-GSTの細胞表面での発現をFlow cytometryにより検出した。さらに、GST結合カラムで精製したTREM-1-GSTはリガンド疑似分子であるTREM-1アゴニスト抗体と結合したが、欠失変異体にGSTを融合したTREM-1ではその結合は見られなかった。 これまでの結果から全長のTREM-1にGSTを融合したキメラタンパク質を用いることでTREM-1のリガンド分子の取得の可能性が考えられる。今年度は、リガンド分子の存在が予想されている好中球や血小板の細胞溶解液からTREM-1-GSTに結合する分子を探索し、さらにリガンド活性を調べる。そして、リガンドのアンタゴニスト分子を作成し、CLP敗血症モデルマウスに投与することで敗血性ショックの制御を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度はリガンド分子の取得に関わるツールの作成し、リガンド取得を試み、リガンド活性を調べることを目的としていた。実際には、TREM-1固定化カラムを作成し、好中球や血小板成分からTREM-1に結合する分子を単離・精製。さらに、液体クロマトグラフィーや質量分析など(LC/MS/MSやMALDI/TOFMS)によりTREM-1と結合する分子を同定するというスキームであった。 実際には、リガンドを取得するためのツール(TREM-1-GSTタンパク質)の作成に時間が掛かってしまい、やや計画通りに進まないという問題が発生してしまった。リガンドを取得するためにTREM-1のリコンビナントタンパク質発現系を構築したが、当初計画していたTREM-1のリガンド結合すると予測される領域(欠失変異体)にGSTを融合させたキメラタンパク質では、リガンド疑似分子として用いたTREM-1アゴニスト抗体との結合がほとんど見られなかった。そこでTREM-1全長にGSTを融合させたキメラタンパク質を用いたところ、TREM-1アゴニスト抗体との強い結合が観察された。 現在、マウスから得た好中球の細胞抽出液を用いてTREM-1リガンドの取得を試みているものの、positiveなデータは得られていない。ベイトとなるTREM-1-GSTの大量発現系の構築やマウス好中球の前処理(LPS刺激やNETsの生成など)も視野に入れリガンド取得を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
・作成したTREM-1-GST固定化カラムを用いて好中球や血小板成分からTREM-1に結合する分子を単離・精製する。さらに、液体クロマトグラフィーや質量分析など(LC/MS/MSやMALDI/TOFMS)によりTREM-1と結合する分子を同定する。単離されたTREM-1リガンドでマクロファージ系細胞を刺激し、TREM-1 シグナルによって誘導される炎症性サイトカイン産生をELISAで調べ、リガンドの生物活性を評価する。 ・リコンビナントのTREM-1やリガンド分子を表面プラズモン共鳴分析(Biacore)に供し、リガンド分子のTREM-1との親和性を確認する。次に、TREM-1リガンドに対して種々のデコイ分子を作製し、リガンドとTREM-1の結合に対する阻害効果をBiacoreを用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
有用であると思われるTREM-1固定化カラムの作成に時間が掛かってしまい、研究課題の遂行が当初の予定よりも進まなかった事が使用額が余ってしまった原因である。研究が順調に進まなかった場合の対応策を先に考えておくべきであり、前年度の反省点として今年度以降に活かさなければならないと考えている。繰り越し分については、TREM-1固定化カラム作成、好中球や血小板を得るためのマウスの購入、マウスからの好中球や血小板の単離、液体クロマトグラフィーや質量分析によるリガンド候補分子の同定や、ELISAによってリガンド候補物質の生物活性を評価するために消耗品の購入および研究解析費として使用する予定である。
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