TREM-1(triggering receptor expressed on myeloid cells-1)は、単球・マクロファージにおいて膜受容体として炎症性サイトカイン産生を誘導して炎症反応を増強する。これまでに、TREM-1が好中球に結合することから、細胞膜表面におけるTREM-1リガンドの存在が考えられており、昨年度までの本研究課題においても細胞膜成分からリガンドの同定を試みていたが、成果が得られなかった。近年、好中球から放出されたDNAやヒストンタンパク質を含む網目状構造物NETsが、細菌を捕獲・殺菌するだけでなくマクロファージを活性化することが見出されている。そこで、本年度においては好中球のNETs構成成分(細胞室・核タンパク質)から、TREM-1リガンドの同定を試みた。 HEK293細胞で強制発現させたTREM-1-GST融合タンパク質あるいは対照群のGST タンパク質をGlutathione Sepharoseと反応させ、洗浄し精製した。次に、1.25%DMSO処理により好中球様に分化誘導させたHL-60細胞から、核タンパク質と細胞質タンパク質をそれぞれ抽出した。精製したTREM-1-GSTおよびGSTタンパク質とHL-60細胞の核タンパク質あるいは細胞質タンパク質をGST-pull down assayに供し、TREM-1と結合する分子を検索した。その結果、核タンパク質においては約200kDa、150kDa、72kDa、65kDa、43kDa、38kDaの分子が、また、細胞質核タンパク質においては約55kDaの分子が対照群と比較してそれぞれ多く結合した。従って、これらの分子はTREM-1のリガンドの可能性が考えられる。 現在、これらの分子について質量分析による同定、単球・マクロファージ系細胞のサイトカイン産生を指標としたをガンド活性測定を行っている。
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