研究課題
緑膿菌感染症対策の一つとしてワクチンの開発は重要であるが、今日までに開発された緑膿菌ワクチンは、その効果と副作用について種々の問題を抱えており、新規なワクチンの開発が望まれている。そこで、本研究では緑膿菌の5型分泌装置によって分泌される蛋白質が、緑膿菌感染予防ワクチンの抗原として有用なのかを解明することを目的としている。この目的達成の前提として、緑膿菌5型分泌蛋白質の一種であるPA3535(EprS)が、病原性因子として機能するのかについて解析を行ってきた。これまでに、EprSが、塩基性アミノ酸残基のC末端側を切断する基質特異性を示すセリンプロテアーゼであることを明らかにした。また、EprSは、プロテアーゼ活性化受容体を介して炎症応答を誘導することから、EprSが緑膿菌の病原性因子として機能する可能性が考えられた。そこで、平成26年度の研究では、病原性因子としてのEprSの役割を明らかにするために、緑膿菌野生型株とそのeprS遺伝子破壊株における各種の表現型を比較し、次の成果を得た。(1)唯一の窒素及び炭素源としてウシ血清アルブミンを含む最少培地における緑膿菌eprS破壊株の増殖率は、野生型株よりも低下した。(2)緑膿菌eprS破壊株では、野生型株と比較して運動性の低下、エラスターゼ及びラムノリピッド産生の低下が認められた。(3)リアルタイムPCR解析によって、緑膿菌eprS破壊株では、エラスターゼなど各種プロテアーゼの遺伝子の発現低下が認められた。このように、EprSは、緑膿菌の様々な表現型に多面的な効果を発揮すると考えられた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Infect. Immun.
巻: 82 ページ: 3076-3086
10.1128/IAI.01961-14