研究課題
病原真菌Candida glabrataは宿主体内で細胞外ステロールを利用して生育する可能性が示唆されている。細胞外ステロール取り込みに必須であると予想されるステロールトランスポーター遺伝子AUS1に着目し、遺伝子発現解析、ステロール分析、マウス感染実験を行い、C. glabrataにおける細胞外ステロール取り込みの活性化機構と病原性との関係を明らかにすることを目的とした。<今年度の成果>AUS1破壊株を用いたステロール解析の結果、細胞外フリーステロールの取り込みにおいてAUS1が主要な役割を果たすことを明らかにした。また、血清存在下で鉄欠乏シグナルを介したステロール取り込みが活性化されることを明らかにした。さらにマウス感染実験においてAUS1破壊株は腎臓への臓器定着率が有意に低下することを見出した。以上の結果より、宿主体内(血流感染時)では遊離鉄濃度が減少し、C. glabrataの細胞外ステロール取り込みが活性化されることが推測された。また、ステロール取り込みが臓器定着効率すなわち病原性にも関係する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
2年間で行う4項目の研究のうち以下の2項目について終了させることができ、論文発表を行った。1.ステロール取り込みを活性化させることのできる培養条件の検討2.マウス感染実験モデルによる、ステロール取り込みの病原性における重要性の検討遺伝子破壊株の作製、ステロール分析、マウス感染実験などのこれまでにほぼ確立していたた実験系を用いて、まず明らかにすべき項目から着手した。実験条件の最適化などの時間が不要であった。さらに、実験結果がほぼ予想通りのものであったため、条件検討などが不要であった。
C. glabrata感染マウス腎臓内よりRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析による網羅的遺伝子発現解析を行う予定であったが、十分なクオリティのRNAを調製することが困難であると考えられる。本項目については鉄欠乏条件を感染時の遺伝子発現状態に類似するものであると仮定し、実験を行う予定である。また、質量分析によるAUS1プロモーター領域に結合する転写因子の同定については、技術的に困難な部分が大きいため、現時点ではAUS1の転写活性化に必要な領域の確定までは終了させる予定である。
DNAマイクロアレイ解析に約半額を使用する予定である。残りは、AUS1のプロモーター解析に必要な試薬・キット類の購入や、消耗品の購入、謝金などに用いる予定である。また、年度末に海外学会発表を行う予定である。
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