研究実績の概要 |
ヒト腸管内には、未だ分離されていない未知・難培養細菌が多数存在する。本研究は、未知・難培養細菌を本来生息する環境に近い条件で培養し、それら細菌の特徴をゲノムレベルで理解することを目的としている。ヒト糞便をオートクレーブ(AC)滅菌およびγ線滅菌し、それらを用いて培地を作成し、未滅菌の糞便を添加して嫌気条件下で培養した。AC滅菌液体糞便培地では、Dialister, Enterococcus, Bifidobacterium, AllisonellaおよびRuminococcus属が増殖し、グラム陽性菌の存在比率が多かった。一方、γ線滅菌液体糞便培地では、Bacteroides, Escherichia, Dialister, ParabacteroidesおよびLachnospira属が増殖し、グラム陰性菌の存在比率が多かった。一般的な嫌気培養で用いられるGAM培地では、Bacteroides, Escherichia, AcidaminococcusおよびMegasphaer属が増殖していた。糞便培地の滅菌法の違いで、増殖する腸管内細菌に大きな差異が認められた。また、AC滅菌ヒト糞便寒天培地では、16S rRNA遺伝子のcolony PCRおよびシークエンスにより、7種のBifidobacterium属が増殖していることが確認された。ヒト糞便で作成した培地により、ヒト腸管内細菌の増殖が可能であり、また、データベース上に存在する分離細菌の16S rRNA遺伝子に高い相同性を示さない配列も検出されたことから、本手法により、未知・難培養細菌の培養が可能であることが示唆された。
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