研究課題/領域番号 |
24790433
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 健太 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20466840)
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キーワード | 動物モデル |
研究概要 |
ハンタウイルスはヒトに腎症候性出血熱を起こす。適当な動物モデルがなく、病態発現メカニズムには不明な点が多い。研究代表者はこれまでに、腎症候性出血熱患者に認められる腎髄質の出血と類似の病変を成熟BALB/cマウスに発現させることに成功した。本研究では、この動物モデルの病態をさらに解析した。尿を検査した結果、接種後6日目に尿蛋白質濃度の上昇、接種後9日目をピークとして、6~12日目に潜血が認められた。一方、腎機能のマーカーの1つである血清中尿素窒素濃度については、コントロールとの差は認められなかった。主要な血中サイトカイン等を比較した結果、インターロイキン (IL-7、IL-13)、ケモカイン (IP-10、MIG、MCP-1、MIP-1α、CXCL1)、TIMP-1濃度の上昇が認められた。特に、IP-10、MIG、MCP-1、TIMP-1濃度の上昇が顕著であった。一方、代表的な炎症性サイトカインであるIFN-γ、TNF-α、IL-1、IL-6や、補体成分であるC5aの濃度に大きな変動は認められなかった。IP-10、MIG、MCP-1は単球やT細胞の遊走活性などを持つ。また、TIMP-1はマトリックスメタロプロテアーゼの作用を阻害する。マトリックスメタロプロテアーゼは細胞外基質の分解の他、サイトカインなどの生理活性物質の活性化など、様々な生理現象に関与している。今後はこれら分子の濃度変化が病態発現の原因なのか結果なのかを明らかにするため、抗体投与の影響を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に申請時に予定されていなかった研究室の引っ越しが行われ、ハンタウイルスを用いた実験を実施するために必要なバイオセーフティーレベル3の実験室の移設、申請に時間を要した。また、感染性材料の保存に使用していたディープフリーザーが故障し、材料を再調製しなければならなくなった。今年度はハンタウイルス感染時に発現量の増加する蛋白質を同定し、その機能阻害の影響を調べる予定であった。しかし、発現量の増加した蛋白質が多数見つかったため、その後の解析の対象とする候補の選抜とその機能を阻害する方法の調査検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
血中濃度の増加が顕著であった分子を対象として、抗体投与等による機能阻害が病態発現に及ぼす影響を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ハンタウイルス感染時に発現量の増加する蛋白質を同定し、その機能阻害の影響を調べる予定であった。しかし、発現量の増加した蛋白質が多数見つかったため、その後の解析の対象とする候補の選抜とその機能を阻害する方法の調査検討に時間を要し、未使用額が生じた。 このため、発現量の増加した蛋白質の機能阻害の影響を調べる実験を平成26年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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