研究課題
1. ATL細胞及びHTLV-1感染細胞はEZH2依存的なエピジェネティック異常があり生存能に関係しているが、その全体像は不明であった。そこでATL細胞、Tax発現不死化T細胞及び正常T 細胞におけるH3K27me3及びH3K4me3のメチル化パターンを網羅的に解析した。ATL細胞は休止期T細胞と比べてH3K27me3の蓄積が顕著であり、初年度に明らかにしたEZH2の過剰発現による異常なメチル化の導入があることがわかった。またT細胞におけるTaxの発現はATL細胞で見られるメチル化異常の一部を再現したことから、HTLV-1感染からATL発症までのメチル化異常の実態が明らかになった。一方ATL細胞におけるEZH2遺伝子の活性化変異はまったく検出されず、過剰発現による活性化が原因であることがわかった。シグナル伝達系の活性化がEZH2の過剰発現を引き起こしている研究成果は、両者が複雑なクロストークを形成して腫瘍細胞の分子レベルの特徴を規定していることを示唆しており、これらが分子標的として有用であることが強く示唆された。2. HIV-1の潜伏化を可視化できる新たなレポーターを作成し、感染初期におけるLTRの制御機構を詳細に解析した。その結果、HIV-1感染初期にウイルス遺伝子発現の異なる集団が同時に形成、維持されることを初めて実験的に証明した。さらにこれらの多様な集団を蛍光タンパク質の発現で分取し、LTR上のエピジェネティック制御を解析した結果、感染初期に集団の一部にpolycomb依存的な抑制が起こり、感染細胞の不均一性を成立させていることがわかった。さらに感染後後期の潜伏化の維持にもpolycomb依存的な抑制が関わっていることがわかった。初年度のHIV-1由来アンチセンスRNAの発見も合わせ、ウイルスと宿主の複雑な相互作用が一定の不均一性を再現性高く生み出し、それらの挙動を正確に理解することが必要であることがわかった。
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Clinical Cancer Research
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PLoS One
巻: 8 ページ: e66378
10.1371/journal.pone.0066378