研究課題/領域番号 |
24790437
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
細谷 紀彰 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (30568928)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞指向性 / HIV / Envタンパク質 / 2重分割タンパク質 / 感染症 / ウイルス |
研究概要 |
細胞融合と2重分割タンパク質を用いたHIVの細胞指向性決定系(DSP-Pheno)を樹立し、実際のHIV感染者の検体を用いて結果を得ることに成功した。平成24年度の研究にて126例のサブタイプBに感染したHIV感染者の血漿からRNAを抽出し、env遺伝子配列を増幅した。増幅したenv遺伝子を発現ベクターに制限酵素処理を用いてポピュレーションを維持したままクローニングを行った。作成したEnv発現ベクターを用いて、DSP-Phenoを用いて126例全てにおいて細胞指向性が決定可能であった。さらに、これまでのゴールドスタンダードとなっている組換えHIVを用いた細胞融合決定系および、臨床現場でも利用が開始されているEnvのV3領域の塩基配列を用いた細胞指向性の予測プログラム(Geno2Pheno)と比較を行った。 2012年5月に中国北京市で行われた1st Asian Conference on Hepatitis B and C, HIV and Influenzaにてポスター発表を、2013年1月に東京都文京区で行われたAsian Research Forum on Emerging and Reemerging Infections – 2013にて口頭発表およびポスター発表を行い、研究成果を報告した。また2012年7月中国青島市にて行われたThe 17th Chinese Biopharmaceutical Association Annual Conferenceにて招待講演として研究内容を紹介した。細胞指向性決定系の開発に成功した研究成果を国際誌(AIDS Research and Human Retroviruses)に投稿し現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
126例のサブタイプBに感染したHIV感染者の血漿からRNAを抽出し、env遺伝子配列の増幅に成功した。増幅したenv遺伝子を発現ベクターに制限酵素処理を用いてポピュレーションを維持したままクローニングを行った。作成したEnv発現ベクターを用いて、独自に開発した細胞融合測定系によりEnvの細胞指向性を決定した。126例全てにおいて細胞指向性が決定可能であった。実際の実験では293細胞にEnv発現プラスミドを導入し、2日後にCD4+CCR5発現細胞もしくはCD4+CXCR4発現細胞と共培養を行い、6時間後に融合した細胞からのみ検出できるGFPシグナルとルシフェラーゼシグナルを蛍光顕微鏡とルミノメーターにて検出を行い、患者由来のEnvがCCR5/CXCR4のどちらと細胞融合能があるかを解析した。現在までの解析で全ての患者でCCR5細胞からのシグナルが検出され、そのうちの約半数でCXCR4細胞からのシグナルが検出できた。患者の細胞指向性はR5指向性(CCR5細胞に感染可能で、CXCR4細胞への感染性なし)、もしくは両指向性(CCR5細胞およびCXCR4細胞の両方に感染可能)のどちらかであり、単独でX4指向性(CCR5細胞へは感染性がなくCXCR4細胞にのみ感染可能)を持つ患者は1例もいなかった。CCR5阻害薬(maraviroc)、CXCR4阻害薬(AMD3100)を用いて特異性を評価すると阻害薬を用いて特異的に阻害効果がみられCCR5もしくはCXCR4特異的に細胞融合を起こしている事を確認した。 同様のEnv発現プラスミドを用いて、これまでのゴールドスタンダードとなっている組換えHIVを用いた細胞融合決定系および、臨床現場でも利用が開始されているEnvのV3領域の塩基配列を用いた細胞指向性の予測プログラム(Geno2Pheno)において細胞指向性を決定し、その結果を比較した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に解析できなかった臨床サンプルについて引き続き解析を行う。特に増幅ができなかった検体に関してはPCRのプライマーと患者配列が合致していない可能性が高いので、プライマーを変えて増幅を試みる。また、血漿中のウイルス量が低い患者においては遠心によりウイルスを濃縮し、そこからRNAの抽出を行う事でenv遺伝子の増幅を試みる。 細胞融合を用いた細胞指向性、組換えHIVを用いた細胞指向性、コンピューターアルゴリズムを用いた細胞指向性と3種類の結果で違いが出たサンプルについては、Envクローンを単離してEnvの全配列を解析すると共に、Env発現クローンで同様に3種類方法で細胞指向性を決定し、より詳細な解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、HIV感染者の血漿からenv遺伝子を増幅するためにPCR関連試薬、および細胞指向性測定のためのルシフェラーゼ測定試薬や分子生物学的試薬の購入が必要になる。 また、結果に相違がみられたサンプルを詳細に解析するためにクローニングを行い、env遺伝子の全長の塩基配列を解析するためシークエンス関連試薬が必要になる。 2013年7月にマレーシア、クアラルンプルールで行われる国際エイズ学会に演題が受理されポスター発表にて発表予定である。このため出張費が必要である。また2年間の成果を論文にまとめ国際誌に投稿する予定である。
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