研究課題/領域番号 |
24790438
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
蝦名 博貴 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (60541951)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | HIV / HSV / クロマチン / ライブイメージング |
研究概要 |
潜伏感染しているウイルスを感染者体内から排除するのは現状では困難である。潜伏感染ウイルスへの対処法として考えられるのは、潜伏ウイルスを再活性化させた上でウイルスを排除するか、もしくは、潜伏感染ウイルスの再活性化そのものを抑制するのが有効であると考えられる。HSVやHIVなどの潜伏感染するウイルスは感染細胞の核内でウイルスクロマチンを形成し、クロマチンレベルで遺伝子発現の制御、すなわち、潜伏状態のON/OFFが制御されているが、その詳細は未だ明らかになっていない。そこで本研究は、細胞核内に侵入したウイルスゲノムが形成するウイルスクロマチンを特異的に標識する実験方法を確立することで、クロマチンレベルでのウイルス発現制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。 これまでに申請者は、ウイルス感染細胞内で新規に合成されるウイルスDNAにFLAG標識ヒストンH4蛋白質を取り込ませるウイルスクロマチンの標識実験方法を確立した。さらには、ラクトースオペロンのラックオペレーター/リプレッサー(LacO/LacI)システムを応用する事で、より特異性の高いウイルスクロマチン標識実験方法の確立に成功した。 これらウイルスクロマチン標識実験方法を用いて、感染細胞染色体に組込まれたHIVプロウイルスクロマチンを特異的に標識し、ウイルスヌクレオソーム分画を分離精製することでウイルス発現制御因子を探索する。それと同時にLacO/LacIシステムを用いる事でHIVプロウイルスクロマチンのライブイメージング解析を行い、感染細胞核内における空間的なウイルス発現制御メカニズムを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は現在までに、ウイルスクロマチンの標識方法として、FLAG標識ヒストンH4の薬剤発現誘導実験系を用いた方法、並びに、LacO/LacIシステムを利用した標識方法の二種の方法を確立した。 後者の実験方法においては、蛍光蛋白質GFP タグを付加したLacI蛋白質とLacOの反復配列DNA間のDNA-蛋白質結合によって、LacO反復配列を組込んだウイルスクロマチンを標識する。そのため、ライブイメージング観察も可能でであり、これまでにウイルス感染細胞において、HIV プロウイルスDNAのライブイメージングに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で確立した二つのウイルスクロマチンの標識実験方法のうち、LacO/LacIシステムを用いたウイルスクロマチン標識方法の方が、その標識特異性にすぐれていた。そのため、以降の実験はLacO/LacIシステムをもちいてウイルスヌクレオソーム(特にHIV-1)分画の精製実験を行なう。 また、現在までにHIVプロウイルスDNAのライブイメージングに成功したものの、現在の実験方法ではHIV感染初期逆転写過程においてLacO反復配列が高頻度で欠損する弱点を有する。そのため、反復配列を保持したHIVプロウイルスDNAの組込まれた細胞を選択的に分離解析するのは現状では困難である。そこで、今後は、HIVプロウイルスの組込みに逆転写の過程を経ないDNAトランスポゾンベクターシステムを用いる事で、LacO反復配列を保持したHIVプロウイルスDNAの組込まれた細胞を高効率で作製する。そして、その細胞染色体状のプロウイルス組込み位置、並びに、核内空間におけるプロウイルスの位置情報、そして、ウイルス発現活性を解析する事で感染細胞核内における空間的なウイルス発現制御メカニズムを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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