研究課題/領域番号 |
24790440
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
榊原 修平 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (10618838)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ウイルス感染 / 自己抗体産生 / polyreactive抗体 |
研究概要 |
本研究の開始時点では、ウイルス感染B細胞において有意に自己反応性B細胞が認められるのではないかと、予想していた。計画していたGFPなどの蛍光タンパク質発現カセットを挿入したリコンビナントウイルスについては、その作製に成功したが、in vivoにおけるB細胞での感染で、蛍光タンパク質を検出レベルまで発現させることができず、感染細胞をFACSによって分取できなかった。そこで、MHV68が感染する胚中心B細胞について、感染の有無をRT-PCRで確認し、感染細胞群と非感染細胞郡に分類したところ、いずれのグループでも自己反応性クローンの出現頻度はほぼ変わりなかった。 MHV68感染マウスの脾臓胚中心B細胞について、単一細胞からの遺伝子クローニングを行い、得られた抗体遺伝子を培養細胞に導入することで組換え抗体を作製し、その反応性を調べた。その結果、感染マウス脾臓胚中心B細胞において、ウイルス抗原に反応するクローンの約30%がdsDNAなどの自己抗原にも反応することがわかった。 ウイルス反応性抗体のSHMを元の配列に戻した場合、ほとんどのクローンはその反応性に変わりはなかった。また、自己反応性については、反応性を失うものが多かった。すなわち、胚中心反応におけるSHMによって自己反応性を獲得するという機構が存在している可能性が示唆された。 並行して、SLEなどの自己免疫疾患患者末梢血について、EBV感染細胞を検出する技術の開発を行なった。培養細胞では、EBV感染細胞を特異的に検出できる手法を開発したが、それを健常人やSLE患者からの検体によって行なった。しかし、in vivoでの潜伏感染は培養細胞でのそれとは異なるのか、ウイルス感染の検出は困難であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予想に反し、ウイルス感染が間接的に胚中心でのクローン選択に影響を与えている可能性が示唆された。その為、計画していた実験のいくつかを変更し、産生される抗ウイルス抗体の特性、特にpolyreactivityについての詳細を調べた。この解析には、時間と労力を必要とする為、研究進度は計画よりもやや遅れていると考えている。しかし、得られている結果は、免疫学的に興味深いものであり、さらに展開させていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予想に反し、ウイルス感染が間接的に胚中心でのクローン選択に影響を与えている可能性が示唆された。すなわち、VDJ組換えレパトアで既にウイルス抗原に反応するクローンが更にSHMを得て、自己反応性を持ってしまうことが考えられる。より厳密なクローン選択が行われていると、そのような抗体は産生されないと考えられるが、このウイルスの間接的な影響によって、クローン選択が曖昧になっているのではないかと考えている。今後は、このような状態を引き起こす要因を宿主、ウイルスの両面の候補因子について、解析を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
一般試薬、フローサイトメーター用試薬、DNA合成、PCR関連試薬、プラスチック器具などの消耗品とC57B/Lマウスの購入費を計上している。 あわせて、国内外の学会への参加における旅費も計上する。
|