本課題では、自己抗体産生を認めるmurine gamma-herpesvirus 68 (MHV68)感染マウス利用し、感染マウス脾臓において、自己反応性B細胞が出現する機構を解明することを目的としている。昨年度、MHV68が誘導するIgG自己抗体は、主に脾臓胚中心反応にて出現する自己反応性B細胞に由来する可能性を示唆する結果を得た。すなわち、単一細胞からの免疫グロブリン遺伝子クローニングにより、感染時におけるマウス脾臓IgG+胚中心B細胞には、複数の自己抗原とウイルス抗原に反応する多分子反応性B細胞が約30%含まれることを見出した。この多分子反応性B細胞の出現が他の免疫反応でも認められるかを明らかにする為、モデル抗原免疫やインフルエンザ感染でも同様の解析を行ったが、多分子反応性B細胞は認められなかった。MHV68はB細胞に感染することから、MHV68感染細胞の反応性を調べたが、予想に反し、感染と非感染細胞群で自己反応性および多分子反応性クローンの出現頻度に差は認められなかった。以上の理由から、多分子反応性B細胞の出現は、B細胞への直接の感染ではなく、MHV68特有の感染動態(systemic infectionや潜伏・持続感染)に起因するものと推測している。 また、マウスモデルにて認められた多分子反応性B細胞について、ヒトヘルペスウイルス感染でも同様のことが認められるかを確かめるため、思春期以降のEBV初感染で発症する伝染性単核球症患者検体から、形質細胞を分離し、同様の解析を行った。急性期の患者由来形質細胞では、多分子反応性IgG産生細胞が認められたが、EBV抗原に明らかに反応しているクローンは獲得することができなかった。得られた抗体クローンの反応性については、今後さらに詳しく解析する必要があると考えている。
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