ヒトヘルペスウイルス 6A(HHV-6A)及び6B(HHV-6B)は近縁のウイルスであり、ウイルスゲノムの相同性は約90%であるが、異なる分子生物学的特質を保有している。今回、我々は、両ウイルスのゲノム間において相同性が低く、かつウイルスの宿主細胞への侵入に必須な遺伝子であるgQ1に着目し、研究を行った。 まず、我々はHHV-6AのgQ1領域をHHV-6BのgQ1に置換したウイルスゲノムを作製し、ウイルスの再構築を試みたが、感染性ウイルスは再構築されなかった。この結果よりHHV-6BgQ1はHHV-6AgQ1の機能を代償できないことが明らかとなった。HHV-6A及びHHV-6Bのエンベロープに存在する糖タンパク複合体、gH/gL/gQ1/gQ2は、異なる宿主レセプターと結合することが判明している。その複合体の中でもgQ1が異なるレセプターとの結合に重要であることも明らかとなっている。そこで、今回、我々はHHV-6AgQ1の一部をHHV-6BgQ1の相同部分に置換したキメラgQ1を作製した。作製したキメラgQ1の機能を解析したところ、HHV-6AgQ1のN末端を含むキメラgQ1は、HHV-6AgQ2、gH、gLと複合体を形成し、HHV-6Aの侵入レセプターであるCD46と結合した。また、同様の方法で、HHV-6BgQ1のうち、HHV-6Bの宿主レセプターであるCD134との結合に重要なアミノ酸残基を同定した。 本研究で得られた成果は、HHV-6A及びHHV-6Bの異なるレセプターによる侵入のメカ二ズムの一部を解明したという事実だけではなくウイルス感染阻止のターゲットの発見にも繋がる可能性がある。
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