研究課題/領域番号 |
24790447
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
宮川 敬 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20580046)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 |
研究概要 |
マクロファージや樹状細胞において、HIVはその複製を効率的に行うために、ウイルス蛋白質Vpxが必須である。VpxはdNTP分解酵素であるSAMHD1を分解することでウイルスゲノムの逆転写を促進する。この詳しい分子機序を解明するため、平成24年度は、Vpxの機能に関与する因子を探索した。Vpx蛋白質は、小麦胚芽を用いた無細胞蛋白質合成法により安定的に合成することに成功し、キナーゼおよびユビキチンリガーゼ蛋白質ライブラリーを用いてin vitro bindingアッセイを行った。続いて得られた知見をもとに、細胞内局在や発現プロファイル情報などを加味し、最終的に、これまでに機能が知られていなかったシャペロン蛋白質とセリン・スレオニンキナーゼ蛋白質が新たなVpx結合因子として同定された。これらの2因子について、(1)Vpxの機能調節に直接関わる可能性、(2)SAMHD1との機能的相互作用に関わる可能性、(3)Vpxによって拮抗される抵抗性宿主因子の可能性について検討した。その結果、シャペロン蛋白質についてはSAMHD1との相互作用を干渉する可能性が、セリン・スレオニンキナーゼ蛋白質については、Vpxのリン酸化に関わる可能性が示唆された。また、このセリン・スレオニンキナーゼ蛋白質の発現により、VpxのN末端領域に存在するセリン残基がリン酸化されることが分かった。このセリン残基は様々な系列のHIVとSIVにおいて高度に保存されており、アラニン残基に置換するとSAMHD1の分解能が欠失することから、本因子はVpxの機能的リン酸化に関与することが推測され、現在生化学的手法を中心に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、当初の目的の第一段階であるVpx結合因子のスクリーニングは完了し、得られた新規因子群について機能解析が進展していることから当初の計画をやや上回るペースで進展している。しかし、ウイルス蛋白質のこれまで未知である特異的リン酸化を高感度に検出するため、本年度は新規にリン酸化認識抗体を作成する必要がある。抗体が完成すれば今後の研究はより加速するものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニングで得られた、新規のVpx結合因子について、以下の手順で機能解析を行う。 (1)Vpxのリン酸化に直接関わる可能性を検証するため、放射性同位体元素を用いたin vitroリン酸化アッセイを行う。候補因子によるVpxのリン酸化が認められた場合は、質量分析装置と断片化ペプチドを用いてリン酸化部位を決定する。また、Vpxのリン酸化ペプチドを合成し、特異的リン酸化を認識するリン酸化Vpx抗体を作製する。 (2)SAMHD1との機能的相互作用に関わる可能性を検証するため、候補因子を過剰発現した細胞、もしくは標的siRNAを導入した細胞を用いて、免疫沈降法やBiFC(Bi-molecular fluorescent complementation)法などにより判定する。またin vitroでVpx、SAMHD1、候補因子を無細胞合成し、in vitro bindingアッセイにてVpx-SAMHD1の親和性を定量的に測定する。 (3)候補因子を発現またはノックダウンさせた細胞にHIVを感染させ、ウイルス複製効率、感染効率などを評価する。候補因子に対する阻害剤が入手できる場合は、阻害剤存在下でのウイルス複製実験を行い、新規抗HIV薬としての有効性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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