研究課題
宿主防御因子SAMHD1は骨髄系細胞や休止期CD4陽性T細胞においてHIV複製を顕著に抑制する。しかしHIV-2感染時においてはウイルスアクセサリー蛋白質Vpxの働きによって細胞内分解され、結果としてHIV-2は効率的に増殖する。細胞内ではSAMHD1やVpxは、他の蛋白質と同様、様々な翻訳後修飾を受けることが知られており、特にSAMHD1のリン酸化は抗HIV活性の制御に関与することが近年明らかになった。しかしながら、Vpxが宿主側因子によりどのような機能的制御を受けているかは不明である。そこで本研究ではVpxのリン酸化に着目し、配列上リン酸化修飾を受けると推測されるアミノ酸残基をアラニンに置換したVpx変異体を作製し、SAMHD1分解能を調べた。その結果、N末端側のセリン・スレオニン(Ser13, Thr17, Thr28)が置換されたVpxはSAMHD1分解能を失った。このうち、Ser13は、HIVの祖先ウイルスであるSIVにおいても高度に保存されていた。そこでSer13のリン酸化特異的認識抗体を作製しウェスタンブロット解析を行ったところ、感染細胞内で実際にSer13がリン酸化されていることが分かった。次にVpxのリン酸化に関わる宿主側因子を同定するため、400種以上の全長ヒトキナーゼ(リン酸化酵素)を合成し、AlphaScreen法を用いてVpxと結合親和性の高いキナーゼを探索した。結果として、同じファミリーに属する3種類のキナーゼがVpxと相互作用し、かつVpxをリン酸化することを見いだした。興味深いことに、これらのキナーゼ阻害剤の存在下では、単球由来マクロファージにおけるHIV-2の感染が抑制され、同時にVpxによるSAMHD1の分解も阻害されていた。これらの結果から、Vpxのリン酸化は、SAMHD1の分解およびウイルス感染促進に関与することが示唆された。
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