研究課題/領域番号 |
24790451
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
谷 英樹 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 主任研究官 (20397706)
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キーワード | 細胞侵入機構 / アレナウイルス / ルジョウイルス / NPC-1 |
研究概要 |
出血熱ウイルス感染症は致死率が高く重篤な疾患を引き起こすため、ワクチン及び有効な治療法の開発が急務である。しかしながら、出血熱ウイルスの多くはバイオセーフティレベル4病原体に指定されているために、本国はもとより世界的にも研究への取り組みが難しく、病態やウイルスの生活環に関する知見は乏しい。本研究では、特にアレナウイルス感染症の治療・予防法の確立のために、ラッサウイルスをはじめ各種南米アレナウイルスおよび新興アレナウイルスのエンベロープ蛋白質(GP)を外套したシュードタイプVSVを作製し、GPの性状解析および細胞指向性、細胞侵入機構の解析を行っている。本年度は昨年度に引き続き、新興ウイルスであるルジョウイルスの細胞侵入機構の解析を行った。このウイルスは、他のアレナウイルス種とは異なるGPの性状を示し、細胞表面にGPが発現しているにも関わらず細胞同士の膜融合が見られないことから、エボラウイルスと同様のエンドソーム内での膜融合に必須の分子の存在が考えられた。そのため、まずエボラウイルスGPを外套するシュードタイプVSVを作製し、このシュードタイプウイルスをコントロールとして解析を行った。コレステロールやリン脂質のエンドソーム内からの排除を阻害する薬剤で処理することで、エボラウイルスおよびルジョウイルスGPを外套したシュードタイプウイルスは感染性が低下した。またエボラウイルスの侵入受容体として報告されたニーマンピックC1(NPC-1)のノックアウト細胞では、ルジョウイルスGPシュードタイプウイルスの感染性が低下した。エボラウイルスGPはNPC-1と直接結合することで細胞侵入できることが明らかにされており、ルジョウイルスに関しては未だ不明ではあるが、NPC-1および脂質の蓄積が細胞侵入の際に何らかの作用を及ぼしていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画通りに実験を行うことができ、新たな知見も得られており順調に進展していると考えている。細胞侵入に関与するシグナル伝達分子の探索に関しては、スクリーニングまでは終了しており、アレナウイルス各種に効果的ないくつか候補阻害剤が得られている。これらに関しては、今後詳細な解析が必要であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ルジョウイルスの細胞侵入の際にNPC-1が直接関与しているのか、ルジョウイルスのGPとNPC-1の相互作用について検討する。また、ルジョウイルスの細胞侵入を阻害できるような阻害剤の探索を進める。ルジョウイルスの細胞表面受容体の探索を行う。ルジョウイルスGPに結合するような分子を質量分析による解析で候補を探し、過剰発現もしくは発現抑制によって、シュードタイプウイルスの感染性がどう影響するかを確認し、受容体としての同定を行う。シュードタイプウイルスでの結果を元に、本来のルジョウイルスの感染性についても、海外の機関との共同研究で確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた海外渡航が延期となったために旅費として計上していた分が過剰となった。 また予定していた論文投稿料を別で支出したため計上していた分が過剰となった。 海外渡航費として計画しているが、実現しなかった場合、物品購入費として代用する。
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