研究課題
出血熱ウイルス感染症は致死率が高く重篤な疾患を引き起こすため、ワクチン及び有効な治療法の開発が急務である。しかしながら、出血熱ウイルスの多くはバイオセーフティーレベル4病原体に指定されているために、本国はもとより世界的にも研究への取り組みが難しい状況にあり、病態やウイルスの生活環に関する知見は乏しい。本研究では、特にアレナウイルス感染症の治療・予防法の確立のために、ラッサウイルスをはじめ各種南米アレナウイルスおよび新興アレナウイルスのエンベロープ蛋白質(GP)を外套したシュードタイプVSVを作製し、GPの性状解析および細胞指向性、細胞侵入機構の解析を行った。その結果、新興アレナウイルスであるルジョウイルスGPは細胞表面に発現しているにも関わらず、細胞同士の膜融合が観察されず、エボラウイルスやラッサウイルスで報告されているようなエンドソーム内での膜融合に関与する分子と同様の作用を持つ分子の存在が示唆された。コレステロールやリン脂質のエンドソーム内からの排除を阻害する薬剤で処理すると、エボラウイルスGPのシュードタイプウイルスと同様にルジョウイルスGPのシュードタイプウイルスでも感染阻害が認められたことから、エボラウイルスと類似の感染機構を示す可能性が示唆された。また、プロテインキナーゼライブラリーを用いて各種シュードタイプウイルスの細胞侵入に関与する分子の探索を行った結果、いくつかの阻害剤でラッサウイルスGP外套シュードタイプウイルス特異的な感染阻害が認められ、この阻害剤は細胞内の主に、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)をターゲットとしており、ラッサウイルスの細胞侵入の際の何らかの関与因子であることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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