研究概要 |
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に対する感染防御には, 細胞性免疫(CMI)が大きく関わると考えられている. VZV CMIはVZV感染細胞抽出液抗原を用いたELISPOT法などにより定量される. CMIを誘導する既知のVZV蛋白は僅かで, 他の蛋白の寄与や主要なCMI抗原など不明な点も多い. 他のヘルペスウイルスでは主要なCMI抗原蛋白は核に存在することから, VZVの核蛋白21種を個別に発現させたHEK293T細胞核抽出液を抗原とし, ELISPOT法を用いて, 20名の水痘既往のある健常人ボランティアから得た末梢血単核球(PBMC)を対象に, CMI応答を共通して誘導する蛋白を探索した. その結果、VZV ORF8, 61, 62, 63, 66は80%以上の検体でCMI応答を誘導した。このうちORF8, 61, 66は今回の我々の検討で初めて明らかにした. 引き続き、ORF61, 66のCMI抗原となるエピトープの同定を試みた. まず, ORF61, 66をそれぞれ3断片に分けて抗原とし、ORF61, 66に対し強いCMI応答を引き起こした4名の健常人PBMCを用いて抗原性を比較した. その結果, ORF66は共通したCMI応答が見られず以降の解析を断念した. ORF61はC末端断片で共通して応答が見られたことから, この領域をカバーする22種のオリゴペプチドを抗原としたELISPOT法によりエピトープ同定を試みた. 結果, ORF61のアミノ酸番号288-307及び348-367の2配列で共通してCMI応答が見られ, これらがエピトープ領域となっていると考えられた. VZVではヒトサイトメガロウイルスの核蛋白であるpp65のような単独で強力な抗原蛋白は見出されず, 複数の抗原によってCMI応答が引き起こされている可能性が示唆された.
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