研究課題/領域番号 |
24790457
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター) |
研究代表者 |
北浦 一孝 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 診断・治療研究室, 研究員 (00518136)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フラビウイルス |
研究概要 |
本研究の目的は、フラビウイルス属に含まれるウエストナイルウイルス(WNV)において、C3H/Heマウスにおける感染実験で確立した実験手法及び解析法を用いて、KOマウスの実験系が整備されているC57BL/6マウスにおける感染実験を実施し、病態解明を行うことにある。そのため、まずWTのC57BL/6マウスにおけるフラビウイルス感受性を正確に評価するため、P3のWNV感染実験を実施する前に、扱いやすいP2のWNVと同じ血清型に含まれる日本脳炎ウイルス(JEV)感染実験を実施した。 具体的にはJEVのJaOArS982株をC57BL/6マウスに感染させた。発症した個体の脾臓と脳を経時的に採取し、Total RNAを抽出した。T細胞の抗原特異的性を評価するため、TCRレパトア解析法(Adaptor-ligation PCR、Microplate hybridization assay)を実施した。TCR抗原認識部位のアミノ酸配列の特異性を評価するため、CDR3サイズスペクトラタイピング、CDR3シークエンス解析を行った。リアルタイムPCR解析により、細胞性免疫にかかわる各種マーカーの発現量を定量した。 Mock群脾臓との比較において、各感染群13 dpiの脳では共通したTCRレパトアファミリーのskewが確認された。シークエンス解析において個体間に共通するクローンが高頻度に認められた。リアルタイムPCR解析の結果から、JEV感染マウス脳内はMock群のそれと比較してTh1タイプのサイトカインバランスを呈し、その偏りは13 dpiまで徐々に増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C3H/HeマウスとC57BL/6マウスはMHCハプロタイプが異なるために抗原特異的T細胞のクローンは当然異なるものの、C57BL/6マウスにおける感染実験においても細胞性免疫において特異性が認められた点、またTh1タイプのサイトカインバランスを呈した点はモデルマウスとしての意義は大きい。これはKOマウスの実験系が整備されているC57BL/6マウスにおけるフラビウイルス感染実験が、従来の実験手法及び解析法を用いて評価を行うことができることを示唆する。したがって研究を続行するうえで、今後のKOマウス感染実験が順調に進展することを予測できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、WNVの病態におけるT細胞の機能的役割解析を進める。WNV脳内浸潤T細胞クローンの樹立として脳炎を発症した各KOマウスから、脳内浸潤T細胞クローンを樹立する。抗原刺激により活性化したT細胞のクローナリティーは高いものと推測されるが、TCRの各Vセグメントに対する抗体を吸着させたmagnetic beadsを利用して、TCRレパートリー解析によって特定されたV遺伝子を有するT細胞を抽出することも考慮する。 さらにT細胞クローン移入に伴う病態変化を検討する。樹立した各クローンのTCRα鎖及びβ鎖の発現型を確認し、ライブラリにおいて発現頻度の高かったTCR発現型を有するクローンを選び出す。このT細胞クローンに対して、in vivo解析としてWNV感染マウスに移入し、脳炎の症状が改善するのか増悪するのかを免疫学的所見及び病理組織学的所見を踏まえて評価する。T細胞の特性上、通常の感染の場合、感染後7日目以降から抗原特異的な反応を起こすものと考えられるが、既にWNV抗原に感作されWNV特異的に活性化する脳内浸潤T細胞を経時的に移入することで、感染初期にウイルス排除に対して活性化可能なT細胞が存在する状況を作製する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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