研究課題/領域番号 |
24790458
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸山 貴司 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10622524)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫恒常性 / Foxp3 / Treg |
研究概要 |
生体内の免疫系は、Forkhead box p3 (Foxp3)と呼ばれる転写因子を発現する制御性T 細胞(Treg)によって恒常性が保たれており、Foxp3の欠損マウスおよび一部変異の入ったヒトでは重篤な自己免疫疾患が引き起こされる事が知られている。 近年、このTreg の分化誘導にはTransforming Growth Factor(TGF)-βと呼ばれるサイトカインの刺激が必須である事が報告された。一方このTGF-βは、interleukin (IL)-6 などの炎症性サイトカインの共存によって、Treg への分化誘導が阻害され、自己免疫疾患の増悪を担うIL-17 産生T 細胞 (Th17) へと分化誘導を促進する事が明らかとなった(Nature. 2006, 441;35-3)。つまり免疫系の制御あるいは増悪は、TGF-β刺激を介したTreg およびTh17 の分化誘導バランスによってコントロールされている事が明らかとなってきた。そこで本研究では、TGF-β刺激を介したTregおよびTh17の分化バランスを決定する新しい分子の役割について検討を行った。 申請者はこの新しい分子が、TGF-β刺激のみで発現が上昇する事を明らかとした。また、この分子の遺伝子欠損マウスを作成した所、末梢リンパ節におけるT細胞が活性化している事、またTregの免疫抑制能が減少している事から、免疫恒常性が破綻している事が示唆された。その原因として、Tregの免疫抑制に関与する分子(CTLA-4, GITRなど)の発現に差が認められるかを調べたところ、野生型マウス由来のTregと同程度の発現が認められた。さらに、抑制性サイトカイン(Interleukin-10)の発現についても、両者で違いは認められなかった。Tregの安定性については、申請者が着目している分子の関与はあまり認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、平成24年度の研究計画にそって、遺伝子欠損マウスを用いた免疫恒常性破綻機構の解明を行った。 すでに申請者は、本研究を遂行するにあたり、十分な実験技術を習熟している事、また実験に必要な道具や遺伝子改変マウスの準備が十分であった事から、計画書通りに研究が遂行できたと感じている。しかし、着目している転写制御因子のTreg分化誘導能への影響については、in vitroの実験系において当初考えていたものとは逆の結果が得られた。 本年度では、Tregの免疫抑制能、分化誘導能および安定性について、着目している転写制御因子を介した詳しい分子メカニズムを明らかとする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【Foxp3 の転写制御メカニズムの解明】 Foxp3の遺伝子発現は、様々な転写制御因子の相乗効果によって複雑に制御されている事が報告されている。Foxp3の遺伝子発現制御領域は複数存在する事が報告されており、転写開始点から1kbほど上流までの【プロモーター】、約2kb下流に存在する【エンハンサー】、約4kb下流に存在する【スタビライザー】などである。申請者は、これら様々な領域を含むFoxp3リポータープラスミドを用いて、転写制御因子の過剰発現と組み合わせることで、着目している転写制御因子が、どの領域に対してどのように働くのかを明らかとする。また、クロマチン免疫沈降法を用いて、TGF-β刺激によるTregの分化過程において、この転写制御因子はFoxp3の遺伝子発現制御領域に直接結合する事が出来るかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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