研究課題
好中球浸潤を伴うステロイド抵抗性のTh17依存性喘息治療の基盤となる、メモリーTh17細胞形成制御機構を明らかにするため、メモリーTh17細胞を形成するCD30発現エフェクターTh17細胞を解析した。その結果、CD30発現細胞では非発現細胞に比べてアポトーシス促進因子であるBimの発現低下が認められ、Bim欠損CD30非発現細胞ではメモリー細胞数が野生型の細胞に比べて増加した。このことから、BimがメモリーTh17細胞形成制御因子の1つであることが明らかとなった。また、CD30発現細胞および非発現細胞を用いてcDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、発現が変動している多数の遺伝子が得られた。そこで、メモリー細胞形成初期段階の細胞における得られた遺伝子のmRNA発現量を解析した結果、数個の遺伝子の発現レベルが一致した。この結果から、この数個の遺伝子をメモリー細胞形成制御候補遺伝子として選定した。また、Th17依存性喘息におけるCD30の役割を明らかにするため、CD30発現細胞を含むエフェクターTh17細胞または含まない細胞を用いてメモリーTh17マウスを作製し、気道炎症を誘導した結果、CD30発現細胞を含むメモリーTh17マウス群において気道抵抗値が上昇し、気道炎症の増悪が認められた。さらに、ある遺伝子欠損Th細胞ではCD30の発現が低下する結果が得られたことから、この遺伝子がコードするタンパク質がCD30発現制御を介してメモリーTh17細胞形成制御を行っていることが明らかとなってきた。
2: おおむね順調に進展している
本申請では(1)メモリーTh17細胞形成にCD30シグナルが必要となる時期の同定、(2)アポトーシス促進因子Bim欠損によるメモリーTh17細胞形成の解析、(3)cDNAマイクロアレイを用いたメモリーTh17細胞形成制御因子の探索、(4) CD30シグナルによるBimおよび(3)で得られた候補分子の発現制御機構の解明、(5)Th17依存性喘息におけるCD30の役割、(6) CD30発現制御機構の解明の研究を行うことを計画しており、初年度においては、(2)、(3)が終了し、(4)~(6)の一部の研究が終了している。また、次年度においては、(1)および(4)~(6)の残りの研究を行う予定であり、十分終了する見込みである。
(1)メモリーTh17細胞形成にCD30シグナルが必要となる時期の同定:メモリーTh17細胞形成にCD30シグナルが必要となる時期を同定するため、(A)野生型のエフェクターTh17細胞をCD30リガンド欠損マウスまたは野生型マウスへ移入する方法、または(B)CD30リガンド欠損または野生型のエフェクターTh17細胞を野生型マウスへ移入する方法を用いてメモリー細胞形成能の変化を解析する。(A)または(B)で変化が見られた場合、(A)ではナイーブ細胞からエフェクター細胞になる際、(B)ではエフェクター細胞からメモリー細胞になる際にCD30シグナルが必要であることが明らかとなる。(4) CD30シグナルによるBimを含む候補分子の発現制御機構の解明:野生型またはCD30欠損エフェクターTh17細胞を抗CD30抗体により刺激を行い、候補分子発現量に変化があるか検討する。また、CD30シグナルであるNFkBなどの阻害剤を用いて検討する。(5)Th17依存性喘息におけるCD30の役割:CD30発現細胞を含む細胞由来または含まない細胞由来のメモリーTh17マウスを作製し、抗原により気道炎症を誘導させ、肺胞洗浄液中の浸潤細胞数およびサイトカイン産生量の検討、また肺組織切片のH&E染色による解析を行い、より詳細な炎症反応を調べる。(6) CD30発現制御機構の解明:現在申請者らが得ているCD30発現誘導シグナル分子がCD30遺伝子領域に結合して発現調節を行っているかクロマチン免疫沈降を用いて検討し、さらに発現調節を実際に行っているのかをCD30プロモーターとシグナル分子を用いたレポーターアッセイにより検討する。
該当なし
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