研究課題
本研究は、アレルギー性気道炎症を引き起こすメモリーTh2細胞とIL-33シグナルについて焦点をあて、メモリーTh2細胞の機能解析を行うことで、IL-33/IL-33受容体をアレルギー性気道炎症治療のターゲットへと展開することを目的としている。平成24年度の一連の研究で、以下に示す3つの新知見を見いだした。1、 IL-33刺激によるIL-5産生メモリーTh2細胞の誘導:我々はこれまでに、CD62LloCXCR3loの細胞表現型を示す細胞集団のみにIL-5を産生し、アレルギー性気道炎症を誘導するpathogenic メモリーTh2細胞がいること、およびIL-33刺激によりメモリーTh2細胞のIL-5産生が上昇することを示している。しかし、IL-33刺激によりCD62LloCXCR3lo以外の細胞亜集団からもIL-5産生細胞が誘導された。このことはIL-33により、non-pathogenicな細胞集団が抗原非依存的にIL-5産生能を獲得し、pathogenic Th2細胞に分化する可能性を示唆している。2、 IL-33によるメモリーTh2細胞特異的なシグナル伝達経路:IL-33によりp38のリン酸化が誘導されること、p38の阻害剤により、IL-33依存的なメモリーTh2細胞のIL-5産生の誘導が抑制されることから、IL-33-p38-IL-5というシグナル伝達経路がメモリーTh2細胞内で作用していることが明らかとなった。3、 IL-33によるメモリーTh2細胞依存的アレルギー性気道炎症の制御:IL-33の受容体を欠損したメモリーTh2マウスは野生型マウスと比較して、好酸球浸潤をはじめとしたアレルギー性気道炎症が著しく抑制された。また、IL-33欠損マウスを用いた解析結果からも同様にアレルギー性気道炎症の抑制が認められた。
1: 当初の計画以上に進展している
概要の1、2の実験において、IL-33によるメモリーTh2細胞のIL-5産生能の誘導、およびその細胞内制御メカニズムについて明らかになった。また3の実験については、マウス個体レベルの解析も順調に結果が出ており、IL-33がメモリーTh2細胞によるアレルギー性気道炎症の増悪、ひいては慢性化に働いていることが明確になり、これらは予定以上の進行状況である。現在、学会発表や海外誌に論文投稿する準備も整っている。
平成25年度は、マウスで明らかとなった知見をヒトでも同様の制御機構が働いているかについて解析を行う。また、IL-33/IL-33受容体を慢性アレルギー性気道炎症に対するターゲットへと展開するため、抗体療法を用いて研究を進める。
該当なし
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