研究課題/領域番号 |
24790466
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤間 真紀 新潟大学, 自然科学系, 助教 (40542246)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | NF-κB / IκB / 抗体産生 |
研究概要 |
本研究では,液性免疫系における転写因子NF-κBとその核内調節因子の一つであるIκBNSのはたらきに注目しており,NF-κBによる抗体産生制御におけるIκBNSの作用機序の解明を目指した。 H24年度はまず,IκBNSによるNF-κBの活性化制御機構の基盤を明らかにする目的で,休止期および活性化B細胞におけるIκBNSとNF-κB分子の経時的相互作用を生化学的に解析した。また,IκBNS欠損B細胞と野生型B細胞のNF-κBのDNA結合活性を比較した。その結果,IκBNS欠損によるB細胞の抗体産生機能の低下は顕著であるのに,IκBNS欠損細胞におけるNF-κB分子の発現量や核移行,DNA結合活性は野生型B細胞と同様であった。更に,IκBNSがNF-κB p50分子と選択的に結合することに着目し,IκBNSの発現や機能発現におけるp50分子の役割をp50欠損マウス由来のB細胞を用いて検討した。NF-κB p50欠損B細胞はIκBNS欠損B細胞と似た性状を示すものの,野生型B細胞と同等のIκBNS発現が見られることから,IκBNSの発現はp50に依存しないことが明らかになった。 次に,B細胞の最も中心的な機能である抗体産生に注目してIκBNSの作用機序の解明を目指した。IκBNSの欠損は特定の免疫グロブリン産生の低下に繋がることから,IgG遺伝子のスイッチ領域に結合するタンパク質を解析したところ,NF-κB分子の他,直接的なDNA結合能を有しないIκBNSも免疫グロブリンスイッチ領域と間接的に相互作用することが示唆された。 以上のように,H24年度の研究によって,抗体産生におけるIκBNSの作用機序を明らかにする上で重要ないくつかの知見が得られ,これまでに報告されているメカニズムとは異なる新規の抗体産生制御機構の存在が伺われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度中に計画していた実験は概ね取りかかることができ,いくつかの実験システムも確立できた。そこで,IκBNS欠損B細胞と野生型B細胞のNF-κBのDNA結合活性を比較したところ,IκBNSとNF-κBp50分子が相互作用することは明らかであるが,B細胞におけるIκBNS発現の欠損はNF-κB分子の発現及びNF-κBの核移行にほとんど影響を与えないことが分かった。このことから,マクロファージなどで見られるIκBNSによるNF-κBの活性化制御とは全く異なる,細胞種特異的なNF-κB活性化制御機構の存在が強く示唆されたが,その仕組みの解析は現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から,NF-κB p50欠損マウスとIκBNS欠損マウスは似た性状(免疫応答の障害)を示すものの,B細胞では両分子の発現や活性は互いに独立して制御されていると考えられる。そこでこれまで注目してきたIκBNSとNF-κB p50分子に加え,これらと相互作用する新規因子の探索も行う。 また,IκBNS欠損マウスでは胸腺非特異的抗原に対する抗体産生の障害が見られるが,特に細菌内毒素であるリポ多糖のようなToll様受容体を介した活性化が著しく低下している。そこで,B細胞のToll様受容体応答におけるIκBNSの作用機序を解明し,細菌感染などに対する免疫調節機構の理解を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究申請時に計画していた研究試薬やヒト細胞株の購入と,培養細胞への遺伝子導入機器の購入を予定している他,新たに計画しているToll様受容体下流のシグナル伝達解析を行うために,細胞質タンパク質のリン酸化やユビキチン化などの生化学的解析に必要な試薬等を購入する予定である。 また,H25年度が研究の最終年度になるため,研究成果を学会や論文として発表するための費用を予定している。
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