研究概要 |
本研究では,リンパ球における転写因子NF-κBとその誘導型核内調節因子(核内IκB)のはたらきに注目しており,NF-κBと核内IκB分子によるB細胞の機能制御機構の解明を目的とした。 我々の先行研究から,核内IκB分子のひとつであるIκBNS欠損マウスでは,胸腺非特異的抗原に対する抗体産生に障害が見られることや,IκBNS欠損B細胞では細菌内毒素であるリポ多糖のようなToll様受容体(TLR)を介した活性化が著しく低下することがわかっていた。そこでH25年度は,B細胞のToll様受容体応答におけるIκBNSの役割と作用機序について各種のTLRアゴニストを用いて検討したところ,IκBNSはTLR-1/2, -4, -6/2, -7, -9の刺激によるB細胞の生存率には影響しないが,増殖活性とIgM, IgG2a/c, IgG3タイプの抗体産生において重要であることがわかった。また,B細胞におけるIκBNSの欠損は,TLR刺激によって誘導されるIL-10産生を著しく低下させることから,近年注目されている制御生B細胞の分化にもIκBNSが関与することが示唆された。 さらに,IκBNSによる免疫細胞機能の正の制御機構の解明を目指し,IκBNS欠損細胞におけるシグナル伝達分子の発現や活性を調べたところ,IκBNS欠損B細胞では別の核内IκB分子であるBcl-3の発現レヴェルが野生型B細胞に比べて低下していた。 以上により,核内IκB分子はB細胞のTLR応答に重要であることが明らかになり,今後はその作用機序の詳細な解明が求められる。
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