研究課題/領域番号 |
24790469
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷一 靖江 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (50432331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | インターロイキン7 / 制御性T細胞 |
研究概要 |
IL-7Rからのシグナルが末梢T細胞の機能に与える影響を調べるため、IL-7R-floxマウスとCD4-Creトランスジェニックマウスを交配した。得られたマウス(IL-7RcKO x CD4-CreTgマウス)と野性型マウスのリンパ節からナイーブCD4 T細胞とナイーブCD8 T細胞をセルソーターで分取し、抗CD3抗体+抗CD28抗体で刺激した時の応答を調べた。その結果、IL-7RcKO x CD4-CreTgマウスの末梢T細胞は、野性型T細胞に比べて、TCR刺激で誘導される活性化マーカーCD69の発現には変化がないが、増殖が減少していた。 次に、IL-7Rが制御性T細胞(Treg)の機能に与える影響を調べた。IL-7RcKO x CD4-CreTgマウスの胸腺内Tregの数は、野性型マウスに比べて20-30%減少していたが、Tregの機能に重要な分子であるCTLA-4やGITRの発現は野性型と差がなかった。また、IL-7RcKO x CD4-CreTgマウスの末梢リンパ組織のTregの数は、野性型マウスより40%減少していたが、胸腺と同様、GITRなどの発現は野性型と差がなかった。さらに、野性型マウスとIL-7RcKO x CD4-CreTgマウスのリンパ節からTregをセルソーターで分取し、in vitroで、野性型マウス由来ナイーブCD4 T細胞の増殖を抑制する活性を比較した。野性型マウスのナイーブCD4 T細胞をanti-CD3抗体と抗原提示細胞で活性化した時の増殖抑制活性は、IL-7RcKO x CD4-CreTgマウス由来Tregで野性型に比べて弱い傾向があることが分かった。この結果から、in vitroにおいては、IL-7RシグナルがTregの機能を増強する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題のひとつであった「制御性T細胞の機能におけるIL-7シグナルの役割」のin vitroでの解析を終了し、論文として報告した。 また、この課題をin vivoでも解析するために、IL-7R-floxマウスをタモキシフェン誘導性にCreリコンビナーゼを発現するUbc-ERCreT2トランスジェニックマウスと交配した。得られたマウス(IL-7RcKO x ERCreTgマウス)のTregをRag2欠損マウスに移植し、タモキシフェン投与によってin vivoでIL-7R欠損を誘導する予備実験も完了している。
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今後の研究の推進方策 |
生体内での制御性T細胞(Treg)の機能発揮におけるIL-7シグナルの役割をより正確に把握するため、IL-7R-floxマウスとUbc-ERCreT2トランスジェニックマウスを交配する。得られたマウス(IL-7RcKO x ERCreTgマウス)と野性型マウスの末梢リンパ節からTregを分取し、Rag2欠損マウスに移植する。さらに、このマウスにOVA特異的TCRを発現するOT-1、もしくは、OT-2 TCRトランスジェニックマウスの末梢T細胞を移植し、OVAとタモキシフェンを同時に投与する。数日後、リンパ節のOT-1、もしくは、OT-2 T細胞の数と、それらのT細胞が産生するサイトカインの量を比較する。これにより、野性型マウスのTregと、IL-7Rを欠損するIL-7RcKO x ERCreTgマウスのTregの間で、T細胞の増殖やサイトカイン産生を抑制する活性に違いがあるかをin vivoで評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
サイトカイン産生をフローサイトメトリーで測定するために、蛍光ラベルした抗サイトカイン抗体(anti-IL-2、anti-IFNgamma、anti-IL-10など)を購入する。
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