これまでに我々の研究室では、IL-7R遺伝子座に直接結合してIL-7Rの発現量を調節する可能性がある転写因子を2つ同定し、この転写因子結合サイトに点変異を導入した2種類のノックインマウス(Mut1マウス、Mut2マウス)を作製してきた。野性型マウスのナイーブT細胞に比べて、Mut1マウスではIL-7R発現が低下し、Mut2マウスではIL-7R発現がわずかに上昇する。 昨年度、IL-7Rを胸腺分化後期から欠損させたマウスのナイーブT細胞は、in vitroでのTCR刺激による増殖が弱いことを報告したが、上記2種のIL-7R点変異導入マウスを用いて、同様の現象がみとめられるかを検証した。点変異導入マウスからナイーブT細胞を分離し、in vitroで様々な濃度の抗CD3抗体+抗CD28抗体によるTCR刺激を行った。その結果、ナイーブCD4、CD8 T細胞ともに、IL-7R発現が低いMut1マウスではTCR刺激に対する応答性が低下しており、IL-7R発現が高いMut2マウスでは亢進していることが分かった。以上の結果から、ナイーブT細胞のIL-7R発現レベルとin vitroでのTCR刺激に対する応答性には正の相関関係が存在しており、IL-7Rが末梢ナイーブT細胞の抗原に対する応答性の調節を担っている可能性が示唆された。
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