研究課題/領域番号 |
24790470
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 一博 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授 (60611035)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ケモカイン受容体 / シグナル伝達 / 免疫細胞動態 |
研究概要 |
我々は,ケモカイン受容体CCR7の細胞内C末端領域に会合する分子としてCOMMD3を同定した.本研究は,COMMD3がT前駆細胞の胸腺への進入過程において果たす役割を解明することを目的としている.平成24年度は,研究計画に従って以下のような研究を行った. 1) CCR7とCOMMD3の相互作用の動態:これまでCCR7とCOMMD3の会合はyeast two-hybrid法においてのみ確認されていたが,哺乳類細胞におけるCCR7とCOMMD3の相互作用の動態は不明であった.そこで,マウス細胞株2PK3にCCR7とCOMMD3を強制発現させ,免疫沈降法による解析を行った結果,CCR7をリガンドで刺激することによってCOMMD3との会合が誘導されることが確認された. 2) COMMD3によるCCR7の反応性制御機構:CCR7を含めGタンパク共役型受容体のC末端領域は,Gタンパク共役型受容体シグナル伝達の制御因子であるβ-arrestinの会合部位として知られている.したがって,COMMD3とβ-arrestinが細胞内で近傍に存在し,物理的かつ機能的に相互作用している可能性がある.そこで,COMMD3とβ-arrestinを2PK3細胞に強制発現させ,免疫沈降法による解析を行った結果,両者間に物理的な相互作用が存在することが確認された. 3) T前駆細胞の胸腺への進入におけるCOMMD3の役割:COMMD3の生体内における機能を解析するため,COMMD3欠損マウスの作成を行ったが,COMMD3を全身性に欠損するマウスは胎生早期に致死であったため,解析が困難であった.しかし,COMMD3を細胞特異的に欠損するマウスの作成も同時に進めており,平成25年度初頭には完成予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,1) CCR7とCOMMD3の相互作用の動態,2) COMMD3によるCCR7の反応性制御機構,3) 分化途上のT細胞系列におけるCOMMD3の発現様式,4) T前駆細胞の胸腺への進入におけるCOMMD3の役割の4つの項目を研究計画として掲げていた.1)および2)の項目に関しては,「研究実績の概要」の項に記した通り,それぞれ重要な知見が得られている.4)に関しても,COMMD3を全身性に欠損するマウスは胎生早期に致死であるため解析が困難であったが,COMMD3を細胞特異的に欠損するマウスが平成25年度初頭に完成するため,期間内に研究計画を遂行することは可能であると考える.3)に関しては,分化途上のT細胞系列の中には極めて小さな亜集団が存在し,このような細胞については未だCOMMD3の発現解析が行えていないため,平成25年度も引き続き検討する.
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,これまでの研究の進捗状況を踏まえ,以下の項目について検討する. 1) 分化途上のT細胞系列におけるCOMMD3の発現様式:分化途上のT細胞系列の極めて小さな亜集団に関しては,フローサイトメトリーによるソーティングと磁気ビーズによる分離を組み合わせるなど,より効率的に精製することによって,COMMD3の発現解析に足る細胞数の分取を試みる. 2) COMMD3によるCCR7の反応性制御機構:前年度に見出したCOMMD3とβ-arrestinの相互作用を足掛かりとして,ケモカインの刺激によってCCR7とCOMMD3およびβ-arrestinの3者間の相互作用がどのように変化するかを解析し,COMMD3によるCCR7の反応性制御機構の解明を目指す. 3) T前駆細胞の胸腺への進入におけるCOMMD3の役割:COMMD3を血液細胞特異的に欠損するマウス(Vav1-Cre x Commd3 flox/flox)における胸腺細胞の亜集団を解析すると共に,COMMD3欠損マウスの骨髄と野生型マウスの骨髄から混合骨髄キメラマウスを作成し,競合的条件下で各胸腺細胞亜集団におけるCOMMD3欠損細胞と野生型細胞の割合を比較することによって,T前駆細胞の胸腺への進入におけるCOMMD3の役割を明らかにする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,主にフローサイトメトリーおよび蛍光組織染色に必要な蛍光標識抗体を中心とした実験試薬,実験用マウス,実験器具といった消耗品の購入費用に研究費を充てる.
|