研究課題
本研究では、炎症アンプ(IL-6アンプ)の制御遺伝子のゲノムワイドスクリーニングよって抽出された遺伝子の中でも、主にZFP1について研究を行った。本研究によって、自己免疫疾患や慢性炎症などに関与していると考えられる炎症アアンプの制御メカニズムの解析が進めば、それらに対する創薬の可能性が拓かれるものと期待される。ZFP1の炎症アンプへの寄与を詳細に調べる上で、内皮細胞株においてshRNAによるノックダウン細胞株を複数作成したところ、いずれにおいてもIL-6、IL-17共刺激やTNFaによるIL-6産生が顕著に抑制された。また、マイクロアレイ解析からはTNFa刺激によって発現するNF-kB依存性の遺伝子の多くが障害されていることが分かった。更に、NF-kB p65のリン酸および核内移行はインタクトであったが、DNA結合能が大きく障害されていた。更にChIP assayにより実際に各種プロモーターへのNF-kBの会合について調べたところ、TNFa依存性の会合はやはり障害されていた。また、内皮細胞株において、ZFP1がTNFa刺激依存的にNF-kB標的遺伝子のプロモーター上にリクルートされること、またp65と複合体を形成することが分かった。以上の検討からZFP1はNF-kBのDNA結合能を調節する新規因子であることが分かった。他方、作成したZFP1ノックアウトマウスについて多発性硬化症モデルの実験的自己免疫性脳脊髄炎EAEをかけた予備的検討では、野生型マウスと同等の病態スコアが得られたため、ノックアウトマウスでは別のZFPファミリーなどが代償している可能性を考え、検討していく。また、ZFP1の他にもNF-kB p65のプロモーター上へのリクルートを制御している分子の同定に成功しており、これらの分子の関わりも検討課題である。
1: 当初の計画以上に進展している
炎症アンプの新規制御機構を探索する目的で本研究を遂行し、炎症アンプを制御する新規遺伝子ZFP1の同定に成功した。また、更なるメカニズム解析の結果、炎症アンプを司るNF-kB、STAT3のうち、NF-kBと複合体を形成し、NF-kBのDNA結合能を制御する因子であることが分かった。これらは未知の分子機構であるだけではなく、癌やアポトーシス等、種々の生理的・病理的現象に関与するNF-kBの活性制御機構について理解が進む可能性がある。また、NF-kB活性化制御に関与する遺伝子を複数同定することができ、今後それらの相互作用についても興味深い知見が得られる可能性がある。これらは全て、自己免疫疾患や慢性炎症性疾患などにおける新規の治療標的となり得る、当初の計画以上の有意義な成果である。
現在までにノックアウトマウスにおいて期待していたフェノタイプが得られていないため、炎症アンプの役割がより明確になっているpassive transferの実験モデルを用い、また関節炎モデルなどについても検討を行う。さらに今後、in vitroではレスキュー実験及びCas9/CRISPRシステムを用いたノックアウト技術によってZFP1の役割をより明確にする必要がある。これらの実験を通じて総合的に、ZFP1の重要性を証明していく。また、NF-kB p65の標的遺伝子のプロモーターへの会合を制御する複数の遺伝子の同定に成功した。これらの因子の相互作用についても、今後更に検討を行っていく。
引っ越しに伴い、実験機器のセットアップ等に時間を要したため、実験に遅延が生じた。計画に沿って速やかに使用予定です。
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