炎症アンプ(IL-6アンプ)は慢性炎症に重要な分子機構であり、線維芽細胞や血管内皮細胞などの非免疫細胞においてNF-kBとSTAT3の活性化によってNF-kBの過剰活性化が誘導される。炎症アンプは自己免疫疾患の発症や慢性移植片拒絶などに重要であることが示され、また、ヒト疾患においても関与している可能性が強く示唆されている。この炎症アンプの制御メカニズムの解明は、創薬の上で意義深い知見を与えるものと考えられる。ノックダウンライブラリーを用いたゲノムワイドスクリーニングにより抽出された遺伝子群のうち、ZFP1は有力な制御遺伝子候補のひとつであった。shRNAによって内皮細胞株にてノックダウン株を作製したところ、IL-6とIL-17による共刺激や単独刺激のほか、TNFaによるIL-6産生が顕著に抑制されていた。また、マイクロアレイにより、NF-kB依存性の遺伝子発現が多く障害されているのに対し、STAT3依存性の遺伝子発現は殆ど影響を受けないことが分かった。更に、NF-kBのリン酸化や核内移行はintactであったものの、kB配列への結合能が強く障害されていた。また、血管内皮細胞株におけるChIP assayによりNF-kBの各種プロモーターへの会合について調べたところ、TNFa応答性の会合がやはり障害されていた。さらに、ZFP1抗体を用いたChIP assayによりZFP1がkBサイトに会合される事、ChIP-on-ChIPによりプロモーター上で刺激依存的にNF-kBと複合体を形成することが明らかにされた。今後ZFP1の欠損マウスや細胞を用い、確認を行う。また他方、ゲノムワイドスクリーニングにより見出されたキナーゼXが、やはりNF-kBのプロモーターへの会合を制御することが明らかになった。in vitroでの過剰発現系により、このキナーゼXのキナーゼ活性がNF-kBの転写活性化に重要であるとの証拠を得ている。今後このキナーゼXによるNF-kB制御機構についても解析を進めていく。
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