研究課題/領域番号 |
24790475
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高田 健介 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 講師 (40570073)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫学 / T細胞 / 正の選択 |
研究概要 |
胸腺における正の選択はT細胞のレパトア形成に重要と考えられてきたが、最近の胸腺プロテアソームの発見により、正の選択が果たす役割を再考する機会が生まれた。本研究では、胸腺プロテアソームを介した正の選択がT細胞の機能に与える影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、胸腺プロテアソームの固有構成鎖であるbeta5tの欠損マウスおよび、これとOT-I TCRトランスジェニックマウスを交配することで得られたモノクローナルbeta5t欠損マウスを用いて、末梢CD8T細胞の表現型、特異的抗原への応答性、サイトカインへの応答性を解析した。その結果、beta5t欠損下で産生されたCD8T細胞では、IL-2を主とするサイトカインへの応答性が顕著に亢進していることが明らかとなった。さらに、これらのCD8T細胞ではサイトカインシグナルのネガティブフィードバック機構が破綻している可能性を見出した。また、興味深いことに、抗原応答後の免疫記憶形成に異常をきたすという知見を得た。これまでの解析結果は、T細胞のレパトアを決定する機構として理解されてきた正の選択に新たな生理的意義を付与し得る点で非常に興味深い。しかしながら、胸腺皮質上皮細胞に特異的に発現される胸腺プロテアソームの欠損が末梢CD8T細胞のサイトカイン応答性に影響するメカニズムは未だ不明であり、次年度は、beta5t欠損マウスにおけるCD8T細胞の胸腺内分化を詳細に検討することが必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時には、平成24年度の計画として、beta5t欠損マウスのCD8T細胞の機能的異常の概要を把握することを挙げた。平成24年度の研究から、抗原応答異常、表現型の異常、記憶細胞の形成異常が明らかとなり、それらを引き起こすメカニズムとしてサイトカインへの過剰応答性が関与している可能性を見出した。概ね計画に沿って進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の結果に基づき、beta5t欠損マウスで認められるサイトカイン応答異常がどのようなメカニズムで引き起こされるかを明らかにする。beta5tのCD8T細胞ではサイトカインシグナルのネガティブフィードバック機構が破綻している可能性が見出されたこと、またbeta5tの発現は胸腺皮質上皮細胞に限定されていることから、CD8T細胞の胸腺内初期分化を詳細に解析する。beta5t欠損マウスの胸腺では、正の選択をうける直前のCD4+CD8+胸腺細胞が異常に蓄積していることから、その段階で何らかの異常なサイトカインシグナルを受けている可能性がある。今後、このCD4+CD8+胸腺細胞集団におけるサイトカイン関連遺伝子の発現およびサイトカインレセプターの発現を網羅的に行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
用途の多くは抗体やサイトカインなどの試薬類、およびプラスチック器具などの実験用消耗品である。器機の購入はない。研究費の一部を、国際学会および国内学会にそれぞれ1回ずつ参加するための旅費、学会参加費に使用する。次年度への繰越額は論文投稿および英文校閲の費用として使用予定である。
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