研究課題
胸腺における正の選択はT細胞のレパトア形成に重要と考えられてきたが、最近の胸腺プロテアソームの発見により、正の選択が果たす役割を再考する機会が生まれた。本研究では、胸腺プロテアソーム欠損下で産生されたT細胞が、抗原受容体レパトアの変容のみならず、抗原反応性の異常を含む多角的な機能異常を示すという予備的知見に基づいて、胸腺プロテアソーム依存的な正の選択を介してT細胞機能が形成される機構の解明を目指してきた。この目的に対し、胸腺プロテアソームの固有構成鎖であるbeta5tの欠損マウスおよび、これとOT-I TCRトランスジェニックマウスを交配することで得られたモノクローナルbeta5t欠損マウスを用いて、末梢CD8T細胞の機能を検討した。モノクローナルbeta5t欠損マウスから得られたOT-I CD8T細胞では、特異的抗原であるOVAペプチドに対する増殖応答が亢進していることから、初年度(平成24年度)は主に、T細胞の増殖に重要なIL-2を含めたサイトカインへの応答性、サイトカインシグナルの異常に注目して解析を行なった。本年度は(平成25年度)は、OVAペプチドの配列を一部改変した種々のバリアントペプチドを用いて、OT-I TCRに微弱な刺激を与えることにより、モノクローナルbeta5t欠損マウスでは、増殖応答のみならず、活性化マーカーの発現といった初期応答も同様に亢進していることを明らかにした。さらにこの異常は、CD8SP胸腺細胞でも同様に認められたことから、胸腺内分化過程における異常が直接的な要員となって引き起こされると考えられた。現在、TCRシグナルの解析を進めており、H25年中に論文をまとめ、投稿予定である。
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