樹状細胞(DCs)は、獲得免疫応答のエフェクターである細胞障害性T細胞(CIL)を刺激し活性化(プライミング)させる抗原提示細胞である。CILのプライミングに必須なMHCクラスI分子を介する外来性抗原の提示(クロスプレゼンテーション)は、獲得免疫の賦活化に必須の抗原提示である。本研究は、クロスプレゼンテーションを制御する分子機序を調べ、優れた抗原提示能を発揮するDCsを創出し、新たな免疫療法への応用を目指すものである。 免疫系転写因子Interferon Regulatorty Factor (IRF)ファミリー分子のうちIRF8は、(D8α^+DCs他一部のDCサブセット特異的に分化と機能制御に関与する。クロスプレゼンテーションがCD8α^+DCs特異的に発現する機序に着目し、詳細が不明であったクロスプレゼンテーション関連分子の発現・機能制御がIRF8によるか検討した。まず、バイオインフォマティクス解析によりDCの遺伝子発現をサブセット間で比較した。細胞はIRF8非依存的に分化誘導されるCD4^+DCを対照群とし、マウス脾臓由来CD8α^+DCsとCD4^+DCs、あるいはDC前駆細胞をIRF8とIRF4遺伝子導入により分化させたDCsを用いた。クラスター解析により、CD8α^+DCとIRF8導入DCsで近似した遺伝子発現様式が示され、CD8α^+DCがIRF8の転写制御依存的に分化することを改めて確認した。さらにChIP解析により、IRF8が転写誘導する遺伝子群に既知のクロスプレゼンテーション関連因子が多く含まれることを確認した。例えばClec9Aはクロスプレゼンテーションされる外来性抗原の貧食受容体として機能するC-typeレクチンであるが、IRF8誘導遺伝子のひとつであることが今回明らかとなった。IRF8が制御するクロスプレゼンテーション関連因子の特定、機能評価を今後詳細に行う。
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