研究課題/領域番号 |
24790479
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
永井 重徳 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50348801)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Th17 / PI3K / Akt / mTORC1 |
研究概要 |
脂質リン酸化酵素であるphosphoinositide 3-kinase (PI3K)とその下流に存在するAkt-mTORC1経路が、Th17分化を正に制御することを見出したため、このPI3K-Akt-mTORC1経路がTh17分化に及ぼす影響を探るため、特にTh17分化に関与する転写因子であるRORγtおよびGfi1に着目して、その分子機構を明らかにすることを目的とする。 平成24年度では、PI3K-Akt-mTORC1経路の下流に存在するp70S6K1(以下S6K1)の活性化によって、Th17分化が促進されることから、その下流の分子の関与について見当した。すると、Th17分化時にS6K1の活性化によって転写因子EGR2が活性化されることを見出した。また、EGR2はTh17分化抑制因子であるGfi1の発現を阻害することを明らかにした。これらのことから、PI3K-Akt-mTORC1経路によって活性化されたS6K1が、EGR2分子を介してGfi1の発現を抑制することにより、結果的にTh17分化を正に制御することを見出した。一方で、PI3KあるいはmTORC1に対する阻害剤によってTh17分化のマスター分子であるRORγtの核移行が阻害されることを見出したが、RORγtは核移行シグナルを持たないため、PI3K-Akt-mTORC1経路による制御機構について見当した。すると、この経路の活性化により、下流に存在するp70S6K2(以下S6K2)がRORγtと結合して核移行を促進することにより、Th17分化を正に制御することを明らかにした。 以上の結果から、PI3K-Akt-mTORC1経路は、少なくともS6K1分子およびS6K2分子を介してTh17分化を正に制御することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでにTh17分化におけるPI3K-Akt-mTORC1経路による制御について、その下流に存在するp70S6K1およびp70S6K2が関与することを証明し、既にCell Reports誌に論文として発表した。また、これに関連した総説を、Genes to Cells 誌およびAnnals of New York Academy of Sciences 誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
PI3K-Akt-mTORC1経路によってp70S6K2が活性化され、これによりRORγtの核移行が促進されることを見出したが、その詳細なメカニズムが不明であるため、今後その分子修飾を含めて解析する予定である。 また、ごく最近になり知られるようになった新たなヘルパーT細胞のサブセットについても、その分化がPI3K-Akt-mTORC1経路によって制御されるかどうかについても、合わせて検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は予定以上に研究が進み、次年度の研究計画分まで一部結果を出せたことと、研究室が今年度で閉鎖されることになり、年度の後半には機器や動物室等が使えなくなったため、計画した研究の一部は中断せざるを得なくなり、当該研究費が生じた。しかし次年度は隣の研究室で機器等を借りることになったため、実験が再開できることになり、また新たなヘルパーT細胞に関しても検討を加えることになったため、次年度の研究費と合わせてこれらの研究を遂行する予定である。
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