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2012 年度 実施状況報告書

肺を起点としたアレルギー疾患発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24790484
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

松下 一史  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20581549)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード喘息 / Th2応答 / 抗体産生
研究概要

平成24年度は肺におけるTh2応答の誘導機構を解析するために、マウスにブタクサ花粉を径鼻投与することにより喘息症状を惹起するモデルを用いた。ブタクサ花粉誘導性のTh2応答にMyD88を介したシグナルが関与しているか検討するためにMyD88欠損マウスを使用したところ、MyD88欠損マウスでも野生型同様にDCならびにTh2細胞の活性化が誘導されたにも関わらず、MyD88欠損マウスではブタクサ花粉特異的な抗体応答が誘導されなかった。したがって、ブタクサ花粉誘導性のTh2型免疫応答において、T細胞の活性化にはMyD88非依存的な刺激のみで充分であるが、IgE応答を含むブタクサ花粉特異的な抗体産生にはMyD88依存性のシグナルが必須であることが明らかとなった。T細胞とB細胞を欠損するRAG2欠損マウス、さらにB細胞を欠損するmuMTマウスに野生型もしくはMyD88欠損マウス由来の脾細胞を移入することでTおよびB細胞、もしくはB細胞においてのみMyD88を欠損するマウスを作製し同様の解析を行ったところ、MyD88を介したシグナルはB細胞において必須であることが明らかとなった。
本研究により、肺を起点としたTh2応答ではB細胞におけるMyD88依存性シグナルが抗原特異的な抗体産生において必須の役割を果たしていることが明らかとなった。MyD88を介したシグナルはTLRやIL-1ファミリーサイトカインにより誘導されることが知られているが、今後B細胞の活性化に関与しているリガンドが明らかとなれば、IgEを介したアレルギー疾患の新規治療標的となると考えられる。特に、今回の研究で明らかとなったように、B細胞におけるMyD88依存性のIgE産生の誘導は肺への抗原曝露において特異的に必要である可能性が示唆され、このことは全身性の副作用の少ない新規アレルギー治療法の開発へとつながるかもしれない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は肺を起点としたTh2応答の誘導機構の解明を目的とした研究である。これまで、アレルゲン特異的IgG1やIgEといった抗体産生の誘導にはTh2細胞の誘導が必須であり、それらは常に相関しているものと考えられてきた。しかしながら、本研究でMyD88欠損マウスを用いた検討によりTh2細胞の誘導と抗体産生は必ずしも相関しておらず、B細胞からのアレルゲン特異的な抗体産生を誘導するにはB細胞自身におけるMyD88を介したシグナルが必須であることが明らかとなった。したがって、当初Th2細胞の誘導に焦点をあてて研究を進めていく予定であったものが、喘息等のアレルギー症状の発症に必須の因子である抗体産生の誘導機構により焦点をあてた研究へとシフトしていった。これにより、肺へのアレルゲン曝露によるアレルゲン特異的な抗体産生誘導機構に関する非常に興味深い知見が得られた一方、当初計画していたTh2細胞の誘導機構に関しての研究はやや遅れ気味となった。

今後の研究の推進方策

本年度は、肺へのアレルゲン曝露によるアレルゲン特異的な抗体産生においてB細胞におけるMyD88依存性シグナルがどのように関与しているのかそのメカニズムについて検討する。また、MyD88を介したシグナルはTLRやIL-1ファミリーサイトカインにより誘導されることが知られているが、実際にB細胞からの抗体産生に関与しているリガンドが何であるかを明らかにする。また、当初の計画にあったように肺を起点としたTh2細胞の誘導機構を検討するためにプライマリーIL-4産生細胞の検討、ならびに抗原曝露により肺上皮細胞に誘導されるアレルギー誘導性遺伝子群の検討を行う。

次年度の研究費の使用計画

本年度も研究費は消耗品(試薬、実験動物、培養器具等)に使用する。
本研究では、in vivoの実験では実験一回一群に最低3-5匹のマウスが必要であることから実験動物として多くの費用を必要とする。またサイトカインや抗体産生の測定のために大量のELISAキットを消費する。さらに、in vitroでの細胞培養、RNAの抽出ならびにリアルタイムPCRのプライマーおよびプローブ、western blottingの試薬が必要とする。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] A critical role of IL-33 in experimental allergic rhinitis.2012

    • 著者名/発表者名
      Haenuki Y, Matsushita K, Futatsugi-Yumikura S, Ishii KJ, Kawagoe T, Imoto Y,  Fujieda S, Yasuda M, Hisa Y, Akira S, Nakanishi K, Yoshimoto T.
    • 雑誌名

      The Journal of Allergy and Clinical Immunology

      巻: 130 ページ: 184-194

    • DOI

      doi: 10.1016/j.jaci.2012.02.013.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Contribution of IL-33-activated type II innate lymphoid cells to pulmonary eosinophilia in intestinal nematode-infected mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Yasuda K, Muto T, Kawagoe T, Matsumoto M, Sasaki Y, Matsushita K, Taki Y,  Futatsugi-Yumikura S, Tsutsui H, Ishii KJ, Yoshimoto T, Akira S, Nakanishi K.
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 109 ページ: 3451-3456

    • DOI

      doi: 10.1073/pnas.1201042109.

    • 査読あり
  • [学会発表] Ragweed pollen-driven IL-33 contributes to the development of allergic rhinitis.2012

    • 著者名/発表者名
      Haenuki Y, Matsushita K, Futatsugi-Yumikura S, Hisa Y, Akira S, Nakanishi K, Yoshimoto T.
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20121205-20121207
  • [学会発表] Contibution of IL-33-activated type II innate lymphoid cells to pulmonary eosinophilia in Strongyloides venezuelensis-infected mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Yasuda K, Muto T, Kawagoe T, Matsumoto M, Sasaki Y, Matsushita K, Futatsugi-Yumikura S, Tsutsui H, Ishi K, Yoshimoto T, Akira S, Nakanishi K.
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20121205-20121207
  • [学会発表] Chitin induces lung eosinophilia dependently on IL-33.2012

    • 著者名/発表者名
      Muto T, Yasuda K, Kawagoe T, Matsumoto M, Sasaki Y, Matsushita K, Futatsugi-Yumikura S, Tsutsui H, Ishi K, Yoshimoto T, Akira S, Nakanishi K.
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20121205-20121207
  • [学会発表] Balb/c FasKO mice develop severe autoimmunity,allergy and highly achivated Tfh cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Futatsugi-Yumikura S, Matsushita K, Fukuoka A, Yoshimoto T, Yonehara S, Nakanishi K.
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20121205-20121207
  • [学会発表] Akirin2 as a Conserved Nuclear Factor Involved in NF-kB Dependant Gene Expression in Inflammation.2012

    • 著者名/発表者名
      5. Sarang T, Matsushita K, Takeuchi O, Akira S.
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20121205-20121207
  • [学会発表] A critical role of pollen–driven endogenous IL-33 in allergic rhinitis.2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshimoto T, Matsushita K, Haenuki Y, Futatsugi-Yumikura S, Fujieda S, Hisa Y,  Akira S, Nakanishi K.
    • 学会等名
      European Academy of Allergy and Clinical Immunology (EAACI Congress 2012)
    • 発表場所
      Geneva/Switzerland
    • 年月日
      20120616-20120620

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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