研究課題/領域番号 |
24790489
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
今西 貴之 独立行政法人理化学研究所, 免疫シグナル研究グループ, 研究員 (10513442)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 共刺激 / Th2 |
研究概要 |
T細胞における核酸認識機構が自然免疫系とは異なることを明らかにしてきたが、その受容体と下流のシグナル伝達機構に関しては不明な点が多い。そこで本研究では強い共刺激活性を示すGpC DNAに特異的に結合するタンパクをプロテオーム解析により同定した。しかしながら、それらの遺伝子の発現をshRNA法によりノックダウンしても、核酸共刺激によるT細胞の活性化に変化は認められなかった。 我々はLL37とゲノムDNAの複合体がT細胞内に取り込まれ共刺激を誘導できることを明らかにしてきたが、LL37以外にも核酸を凝集させる因子があることが予想されるため、プロテオーム解析によりその同定を試みた。その結果、いくつかのヒストンファミリー分子が同定された。そこでヒストンとゲノムDNAの複合体でT細胞を刺激したところ、リンカーヒストンのH1では共刺激を誘導できなかったが、コアヒストンのH2A、H2B、H3、H4では共刺激の誘導が認められた。これと相関するようにコアヒストンとゲノムDNAの複合体はT細胞への強い取り込みが認められたが、ヒストンH1ではほとんど取り込みが認められなかった。コアヒストンとゲノムDNAの複合体がエンドソームとリソソームに蓄積するのを共焦点顕微鏡で観察した。さらにヒストンH2AとH3はTLRリガンド+IFN-g刺激により、樹状細胞から分泌されることも明らかにした。 さらにナイーブCD4+細胞を核酸存在下で活性化するとTh2サイトカインの産生は増加するが、逆にTh1サイトカインのIFN-g産生は著明に減少することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の核酸受容体の同定には至らなかったが、ゲノムDNAと結合し、T細胞への取り込みを促進し、共刺激を誘導する因子としてコアヒストンを同定することができた。コアヒストンは炎症刺激に伴い、樹状細胞から分泌されるため、炎症時に死細胞から放出されたDNAと複合体を形成することにより、T細胞の活性化を増強することが示唆された。 また、核酸刺激の新規の機能としてTh2サイトカインの発現を誘導することを発見したことは、T細胞の核酸認識の生理的意義を理解する上で興味深い知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
核酸で刺激されたT細胞はTh2型のサイトカインを優勢的に産生することから、核酸刺激がTh2細胞への分化を促進することが予想される。そこで核酸刺激がTh2細胞分化に及ぼす影響を検討するとともに、その分化誘導の分子機構を調べる。核酸受容体の同定に関してはデータベース解析により決定した核酸受容体候補分子の遺伝子欠損マウスの表現型解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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