研究課題/領域番号 |
24790490
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
D NYAMBAYAR 独立行政法人理化学研究所, 免疫制御研究グループ, 研究員 (50443057)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナチュラルキラーT(NKT)細胞 / CD1d / 胸腺 / 分化 / 前駆細胞 |
研究概要 |
NKT細胞分化は、胸腺のCD4陽性CD8陽性ダブルポジティブ(DP)細胞からNKT細胞系列に分岐すると考えられてきたが、それ以前の未分化なダブルネガティブのステージ(DN)に異なる2種の前駆細胞「DN1e」と「DN4lo」が存在することを申請者は見出した。これらのNKT前駆細胞はCD1d欠損マウスにおいても認められる。NKT細胞のT細胞抗原受容体であるVα14Jα18受容体が細胞表面に発現する前にNKT細胞の発生を特徴づける新しい概念を提唱するものである。本研究の目的は胸腺DN画分からのNKT前駆細胞の分化経路の詳細を明らかにすることである。 当該年度、1)申請者が確立した「一細胞RT-qPCR法」によって、「DN1e」NKT前駆細胞の特異的表面分子(CD5+CD24-CD25-CD27+CD44+CD117-CD127+Ly108-CXCR3+など)同定に成功。これらの抗体を用いて、「DN1e」細胞の存在率を3%から80%程度まで濃縮できた。2)「DN1e」前駆細胞のRNA-sequencingによる網羅的遺伝子発現解析と、その後の100%純度の前駆細胞を集めたサンプルを用いたRT-qPCRによる検証で、成熟NKT細胞と異なる、「DN1e」NKT前駆細胞に発現する10個の特異的転写因子を同定した。3)Notchリガンドを強制発現させた骨髄由来ストローマ細胞OP9/Dll-1を用いたNKT細胞分化誘導実験において、「DN1e」がIFN-γ産生性のTh1型NKT細胞、「DN4lo」がIL-4産生性のTh2型NKT細胞に機能分化する前駆細胞であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)DNステージに存在するNKT前駆細胞の存在率は1-3%と低く、解析が困難であった。単一細胞high throughput RT-qPCR解析システムを開発した結果、成熟型NKT細胞には発現しない前駆細胞特異的な細胞表面分子を同定できた。それらの抗体を用いて80%の存在率で濃縮できる分離技術を確立できたことが実験計画遂行のブレイクスルーとなった。 2)前駆細胞を単一細胞レベルで分離する技術も開発し、100%純粋な前駆細胞サンプルを用いてRT-qPCRにより前駆細胞特異的転写因子を検証・確定することが可能となったことが極めて大きい成功要素である。 3)関連遺伝子の探索:100%純度の単一細胞前駆細胞を用いて (1)RNAseqなどの遺伝子発現プロファイリングで同定した転写因子と表面分子の候補遺伝子群の発現の検証が可能になった、(2)信頼性のある多変量解析により、前駆細胞の機能予測とOP9/Dll-1を用いたNKT細胞への分化誘導による検証が可能でになった。
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今後の研究の推進方策 |
胸腺DN画分に存在するNKT前駆細胞の分化経路の解明を目的に研究を推進する。主に「DN1e」前駆細胞特異的に発現する遺伝子の欠損マウスを作成し、NKT細胞の分化及び機能解析を中心に行なう。フローサイトメーターやRT-PCRといった技術を駆使し、DP胸腺細胞や末梢のCD4陽性T、CD8陽性Tと比較検証しながら、詳細に解析を行う。候補遺伝子によっては胎生致死となることが想定される。この場合、胎児肝臓を用いた混合キメラマウスを作製し、機能解析に供する。さらに、候補遺伝子の強制発現やノックダウンには、レンチウイルスを用いた方法を採用する。 CD8a-Cre;RAG-conditional knock-outマウスを作成し、「DN1e」と「DN4lo」 NKT前駆細胞の由来を同定する。このマウスではDPステージ画分で遺伝子再構成に必須のRAG遺伝子が欠損する。すなわち、このモデルでの成熟NKT細胞の存在は、NKT細胞分化経路においてDPステージを経由しないことを意味するため、きわめて重要な遺伝子レベルでの証拠となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、遺伝子発現システムの開発とそれを用いた解析に重点を置いた。そのため遺伝子改変マウスを用いた動物実験や国外学会への出張を行なわなかった。平成25年度には、予定していた遺伝子改変マウスを用いた動物実験を行なう予定である。
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