研究課題
結核ワクチンには、呼吸器粘膜において結核菌特異的な免疫反応を誘導する性質が求められる。そこで本研究では、呼吸器粘膜に対する有効なベクターとしてヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)を用いた結核ワクチンの開発を行った。hPIV2ベクターに、代表的な結核抗原であるAg85Bを組み込んだリコンビナントhPIV2(rhPIV2-Ag85B)を作製し、これをマウスに経鼻投与で免疫することでそのワクチン効果を検討した。rhPIV2-Ag85Bを複数回免疫したマウスにおいて結核菌の攻撃接種を行ったところ、免疫マウスの肺では結核菌の菌数に顕著な減少が認められた。これは既存のBCGを免疫した群と比較しても有意に低い値であった。さらに、免疫マウスから脾臓並びに肺縦隔リンパ節細胞を分離し、これらをAg85Bで再刺激したところ、抗原特異的なIFN-γ産生が認められ、免疫回数に比例してその反応は増強されていた。このことから、rhPIV2-Ag85Bは複数回の追加免疫が可能なワクチンであることが示された。また、一般的に結核菌に対する免疫応答は遅く、感染初期に菌の増殖をコントロールできないことが発症につながるとされているが、rhPIV2-Ag85Bを免疫したマウスでは、結核菌の攻撃接種後速やかに抗原特異的T細胞が肺で誘導され、このことが効率的なワクチン効果に関与していると考えられる。一方、ヒト呼吸器上皮細胞を用いた解析においては、rhPIV2-Ag85B感染細胞でRIG-Iレセプターを介してIFN-βの産生が増大していることが確認された。このことは、hPIV2ベクター自体がアジュバント効果を持ち、呼吸器粘膜の活性化に作用し得ることを示唆するものである。以上の結果より、rhPIV2-Ag85Bは新しい結核ワクチンとして有用であり、今後の臨床応用が期待できる。
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Vaccine
巻: 26;32(15) ページ: 1727-1735
10.1016/j.vaccine.2013.11.108.