本研究では北海道における冬季の患者受療行動モデルを構築することを目的として研究を行なった。夏季と冬季では積雪や路面凍結といった要因により道路状況が大きく異なり、そのため冬季における患者の移動負担の増加することが一般的に知られているが、その詳細は不明なことが多いため、今回、シミュレーション分析を試みた。 患者受療行動モデルを分析するために必要となる地理情報システムを構築して、このシステムに道路ネットワークデータと医療機関のポイントデータを実装し、道路の区間ごとの所要時間などの属性情報にもとづく北海道における冬季の天候・路面状況が患者受療動向に与える影響を評価した。 所要時間ごとの人口カバー率について所要時間にかかるコスト係数を用いて札幌二次医療圏および上川中部二次医療圏を対象としてシミュレーション分析を行った。その結果、冬季においては中核医療機関までの所要時間が増大することを地図上に視覚的に表現して、冬季の天候・路面状況による中核医療機関までの所要時間と二次医療圏に占める人口カバー率および面積の変化を明らかにした。この分析により、市街地周辺では、冬季は夏季に比べて走行車線が狭くなったり、交差点周辺での路面凍結による自動車の走行速度の低下が見られる一方、郊外では視界が悪いような場合において、特に自動車の走行速度が低下して移動に時間を要することが示唆された。さらに北海道における夏季と冬季の実際の交通特性について調査した道路交通データ(カーナビプローブデータ)を利用して、シミュレーション分析の最適なパラメータに関する検討を行い、実際の交通特性に基づくシミュレーションの妥当性について検証を行った。
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