研究課題/領域番号 |
24790495
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
成田 大一 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (90455733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線障害 / リハビリテーション / 高線量被ばく / 筋 / 放射線皮膚障害 |
研究概要 |
平成24年度は,ラットを用いた下肢の局所的放射線障害病態モデルを構築し,リハビリテーション介入を実施する実験系を作成することを目的とした。ラットは生後9週齢の成熟した雄を使用した。放射線照射にあたっては,自作の固定器にラットを背臥位に固定し,大腿部と下腿部以外を厚さ3mm以上の鉛板にて遮蔽して,放射線を照射した。また,放射線の照射強度は予備実験により30Gy以上が必要と判断されたため0Gy,30Gy,50Gyとした。さらに照射後6週間飼育して,皮膚の状態を観察するとともに,1週間毎に足関節背屈の関節可動域測定ならびに24時間の活動量調査を実施した。測定最終日には,照射部位の皮膚,ヒラメ筋を採取し,ヒラメ筋は湿重量を測定し,皮膚は4%ホルムアルデヒド溶液中で保存した。 その結果,30Gyおよび50Gy照射群の両群で照射後2週頃より脱毛や出血,浸出液が認められ,4週目頃より痂皮が形成された。活動量は30Gy照射群では,3週目から4週目にかけて一時的に低下するが,5週目以降は改善する傾向が認められた。50Gy照射群では,3週目頃から低下し,6週目までわずかな改善しか認められなかった。足関節背屈の関節可動域50Gy照射群で大きな低下が認められた。筋の湿重量は30Gy照射群,50Gy照射群の両群で低下が認められた。 以上の結果と予備実験の結果から,放射線障害の病態モデルの構築には,30Gy以上の大線量の放射線照射が必要であるが,さらにリハビリテーションの介入効果を検討するためには,関節可動域や活動量に大きな影響を及ぼす50Gyの放射線照射が必要であると考えられた。また本研究結果をうけて,当初の計画では,リハビリテーション介入として関節可動域運動のみを考えていたが,50Gy照射群では,活動量も大きく低下することから,運動負荷を取り入れられるリハビリテーション介入に変更することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画では,リハビリテーションの介入方法として小動物用足関節運動装置を用いた足関節の間歇的ストレッチを計画していた。しかし,病態モデルの放射線照射後の経過を観察する中で,著明な炎症症状が改善した後も活動量が低下するということが明らかになった。そのため,リハビリテーション介入として運動負荷を取り入れられる内容のものも取り入れる必要性があると考えられた。このようにリハビリテーションの介入方法を再検討する必要性が生じたために実験計画がやや遅延している。しかし,現時点ではリハビリテーションの介入方法としてトレッドミルを用いた歩行運動を実施することに決定し,来年度以降は目標達成に向けて,順調に進展するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果により,病態モデル作成のために必要な放射線の照射線量や遮蔽方法など基礎的なデータを収集することができたため,平成25年度には,採取した皮膚や筋の組織学的検査を実施して,さらに詳細なデータ収集を実施する。 リハビリテーションの介入方法に関しては,当初計画と一部変更して,運動負荷を実施できるトレッドミルを用いた歩行運動を実施することとしたが,使用方法に関してはすでに修得済みである。 上記のことから,今後の推進方策としては,現在採取している皮膚や筋の組織学的検査実施後は,当初の計画通り,病態モデルに対してリハビリテーション介入を実施して,リハビリテーション非介入群との違いを検討していくことが挙げられる。特に平成25年度はリハビリテーション非介入群,介入群ともに標本数を増やしていくこと(各群ともに10標本以上)を目標として研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように,当初計画ではリハビリテーションの介入方法として,小動物用足関節運動装置を購入して足関節の間歇的ストレッチを実施する予定であった。しかし,病態モデルの経過を観察した結果,より良い成果をあげるためにはトレッドミルを用いた歩行運動を実施することに変更した方が良いと考えられ,トレッドミルを購入した。その差額分の繰越金が発生した。しかし,さらにより良い研究成果をあげるためには,リハビリテーション介入として,トレッドミルによる歩行運動に加え,足関節の間歇的ストレッチを実施できることが理想である。そのため,平成25年度の研究費の使用計画として,実験に支障が出ない範囲で当初購入予定の装置よりも安価でかつ助成金額の予算範囲で小動物用足関節運動装置の設計を計画している。 また,当初計画では,病態モデルの活動量調査は計画していなかったが,研究代表者が所属する施設にある装置(回転ゲージ)を用いて調査したところ,研究計画を一部修正すべき貴重なデータを収集することができた。しかし,当施設にある回転ゲージのみでは数が足りず,標本数を増やしたり,回転ゲージ内で常に飼育することは困難である。そのため,回転ゲージについても実験の進行や成果発表に支障が出ない範囲で購入を計画している。
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