最終年度は,これまでに我々が構築してきたラット後肢の局所放射線障害モデルに対してリハビリテーション介入(トレッドミル走行)を実施する実験系を用いて,ラット後肢の筋ならび皮膚の組織にどのような影響を及ぼすかを明らかにした。 具体的には,8週齢の雄ラット18匹を使用し,X線非照射群(CON群,n=7),50GyX線照射群(50Gy群,n=5),50GyX線照射後,トレッドミル走行を実施する群(50Gy-T群,n=6)に無作為に割り付けた。X線の照射は,ラットが9週齢時に実施し,CON群ならびに50Gy群はその後7週間通常飼育を実施し,50Gy-T群はX線照射翌日からトレッドミル走行を実施した。7週間後,放射線照射部位のヒラメ筋と皮膚を採取した。ヒラメ筋は4%パラホルムアルデヒドにて固定後,パラフィン包埋し,5μmに薄切した。皮膚組織は凍結包埋後,10μmに薄切した。両組織切片にHE染色を実施後,ヒラメ筋に関しては筋横断面積を測定し,皮膚組織に関しては病理組織学的に評価した。その結果,50Gy-T群では50Gy群に比べ筋横断面積が大きく,トレッドミル走行により放射線照射部位においても筋委縮が抑制されることが明らかになった。しかし,皮膚組織においては,50Gy-T群では50Gy群より血流障害を伴う変性と壊死が助長されおり,運動負荷が悪影響を及ぼすことが示唆された。 昨年度までに我々は,障害モデルに対して同様にトレッドミル走行を実施した結果,関節拘縮が改善されるという結果を得ている。 以上の成果を総合的に考えると,放射線障害に対する運動負荷を伴うリハビリテーション介入は,筋骨格系に対しては有効に作用する面もあるが,特に血流障害を伴うような重度の放射線皮膚障害に対しては,悪影響を及ぼす可能性が高く,その病態と病期に応じた介入方法を選択する必要があるといえる。
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