研究実績の概要 |
平成26年度は、これまでの研究を踏まえ、医療保健福祉現場での専門職連携実践能力開発を検討する際に必要となる学習・教育理論について包括的に整理した。その結果、生涯学習研究、経験学習研究、熟達論、状況的学習研究、水平的学習研究、能力研究、専門職連携能力研究などの理論を横断させ考察する必要性が明らかになった。これまで現場での専門職連携実践能力開発を分析する学習・教育理論的枠組みは整理されておらず、意義ある研究成果と言える。 また、この知見をもとに、救急救命士のキャリア段階における経験と獲得能力の関係性の解明を目的とした質問紙調査を、キャリア11年以上の者を対象に実施し、107名の回答を分析した。その結果、10年目までは、病院実習が救命活動スキルを、他分野専門職との連携プロジェクトがマネジメントスキルを、部下・後輩の指導と他地域職員との出会いが両スキルを高めており、11年目以降では、医師との関わりや組織異動が救命活動ノンテクニカルスキルを、職場改革や他分野専門職連携プロジェクト、激甚災害での活動がマネジメントスキルを高め、他職種との関わりは上記両スキルを同時に高めていることを明らかにした。また現在現場で働く救急救命士は、10年目までは同職種連携を中心に、11年目以降は他職種との連携から能力獲得が促されていることを明らかにした。この研究は、論文「高橋平徳. (2015). 救急救命士の経験学習: 経験と能力の関係性. 保健医療福祉連携, 8(1).」として結実している。この研究は、経験と能力の関係性を量的調査によって解明したことのみでなく、研究が不足している救急救命士の現場での能力開発を対象としたこと、連携対象や範囲により獲得される能力が異なることに示唆を与えており、本研究全体の目的達成とともに、今後医療保健福祉現場での専門職連携実践能力開発を検討する際に貢献できる研究であると言える。
|