研究課題/領域番号 |
24790497
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
冨尾 淳 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10569510)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | セーフコミュニティ / セーフティプロモーション / 地域防災 / 医療政策評価 |
研究概要 |
セーフコミュニティ(SC)およびセーフティプロモーションの評価指標に関する先行研究の文献レビューを実施し、地域のセーフティプロモーション活動の内容に応じた評価指標の分類、整理を行った。 国内のSC認証/認証準備自治体の資料および行政担当者や住民へのインタビューを通じて情報収集し、自治体のSC活動のあり方を、特に対策設定のプロセスに注目して現状の分析を行った。これにより、①安全上の課題の優先順位の設定が不十分である、②対策委員会のメンバー構成により実施されるプログラムの内容に偏りが生じる可能性がある、③実施されているプログラムの科学的根拠について検証が不十分である、といった課題が明らかになった。また、防災対策については、一部の自治体では、自治会等を中心とした避難支援等の対策が講じられているが、医療機関との協働が不十分であることが明らかになった。 2012年中にSC認証を取得した小諸市においては、市の中核病院における外傷サーベイランスシステムを構築したことにより、外傷患者の発生動向を個人属性や発生場所、日時、転帰等を含めて継続的に把握することが可能となった。現状のデータから、高齢女性の転倒による入院の割合が高く、また夏季の住宅周辺での蜂刺症が多数発生していることなどが明らかになった。 海外のSCの事例として、SC活動の先進地である台北市の複数のSCを視察し担当者および住民代表へのヒアリングを行った。官民連携の活用や、複数の自治体を包括した専門家による学術的支援、統一入力・解析システムを用いた多施設による大規模な外傷サーベイランスシステムなど、我が国でも導入を考慮すべき事項が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の複数のSC認証/認証準備自治体の状況を把握し、SC活動の現状分析と課題抽出を行うことができた。また、小諸市をはじめとする一部の自治体では、医療機関における外傷サーベイランスシステムを構築し、さらに、SC活動を行っていない隣接する自治体の医療機関からのデータ提供も可能となる見込みであり、既存の救急搬送データ等と併せて、今後のSC活動の評価を行う上でのベースラインとしての外傷データを収集する環境が整備できた。 住民の「防災・安全に関する行動」に関するアンケート調査については、実施には至らなかったが、複数の自治体に置いて質問票の準備が整っており、25年度前半には実施可能な状況となっている。 以上より、現在までの研究の目的の達成度は概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に実施した調査結果をもとに、SC認証/認証準備自治体およびコントロールとなる自治体について、外傷等の健康アウトカム、診療報酬明細書(レセプト)情報から得られる医療費について、記録・分析を行う。また、多くの自治体で住民の関心が高いとされる「防災」を中心に、地域の安全に関する住民の意識、行動と自治体の活動への満足度、災害時の医療に関する住民のニーズなどについて、複数の自治体でアンケート調査を実施する。その際、上記項目の変化を把握するための追跡調査が可能な住民を募り、パネル調査の体制を整備する。上記の調査対象の自治体が実施するセーフティプロモーションに関連する実施プログラムを、その科学的根拠とともに整理・分類し、プログラムの内容と健康アウトカム・医療費や住民の意識、行動との関連を分析する。また、医療機関の体制や道路の整備状況等、SC活動とインフラの整備状況との関連についても分析する。さらに、SC認証/認証準備自治体の実際のSC活動について、住民への周知の状況、SC活動に関する住民とのコミュニケーションのあり方(使用メディア、情報の内容、タイミングなど)について確認する。 未就学時の安全対策については、複数の自治体の保健部局に働きかけ、乳幼児健診、就学時健診の対象者における外傷、防災に関する発生状況と予防行動についての調査依頼を行い、協力自治体における未就学時の外傷サーベイランス体制を構築する。 台湾、韓国などアジアのSC自治体と我が国のSC自治体の実施体制、プロセス、健康アウトカム・医療費の現状を比較分析することで、効果的なSC体制のあり方について検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は24年度の未使用分と併せて直接経費として190万円を使用する予定である。内訳は以下の通りである。 物品費(40万円):調査時の記録媒体、専用の入力端末の購入費用として30万円、書籍・文献の購入費用として10万円を使用する。 旅費(80万円):国内自治体の調査旅費として30万円、海外自治体(台湾、韓国を予定)の調査として20万円、学会参加の旅費として30万円を使用する。 謝金(10万円):医療機関等のアンケート調査、ヒアリング調査を行う際の謝金として20万円を使用する。 その他(60万円):自治体が実施するアンケート調査、サーベイランスデータの入力作業として35万円、論文作成、学会発表用のポスター作成として5万円、学会参加費(国際学会2件、国内学会3件を予定)として20万円を使用する。
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