最終年度である本年度は、医療面接実習にて模擬患者(以下SP)が「患者役」として習熟する方法としてのリフレクション(自己の経験に対する振り返り・内省)について、以下の研究活動を行った。まず、医学生とSPによる模擬医療面接の映像記録について、本年度は面接終了時に両者間でなされるフィードバック場面を対象として、社会学の会話分析の手法から分析を行い、その成果を日本医学教育学会において口頭発表した。この分析から、フィードバックされる評価内容だけでなく、フィードバックが活性化される場面や、医学生―SP間あるいは学生間の相互行為の特質が明らかとなった。また、これまで実施してきた医学生―SP間の模擬医療面接の会話分析に、リフレクションの思想的背景のひとつであるE.ゴフマンによるドラマトゥルギー(dramaturgy)の観点を合わせることで、模擬医療面接において、SPが医学生との相互作用のなかで、どのように患者役を演じているのか、またこの相互作用の場の形成に、両者が役割を演じることがどのように機能しているのかについて明らかにした。本研究成果はシンポジウム「教育と福祉のドラマトゥルギー」での招待講演にて発表した。なお、本年度から看護学領域の実習へのSPの導入を開始した。これまでの研究成果をベースとして、SPと看護学生のベッドサイドの場面を想定したロールプレイやフィードバックについても会話分析やドラマトゥルギーの観点から分析することで、SPの患者役の習熟に向けてより多角的なリフレクションの研究を遂行できると考える。
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