研究課題/領域番号 |
24790502
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
玉木 悠 徳島大学, 大学病院, 助教 (40563987)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 二次利用 / OLAP |
研究概要 |
本研究では容易に任意の項目を組み合わせて集計,検索できるインターフェースを提供し,技術的知識が無くともシステムに蓄積された医療情報の集計,分析を可能にするOLAP(On-Line Analytical Processing)システムの構築を目的としている.まず,OLAPシステムの接続対象となる徳島大学病院DWHについて接続項目の検討を行った.その結果,DWHでは全てのデータを保持しているわけではなく,集計した数値のみ保持している項目もあることが分かった.その為,項目によってはDWHに集約される前のデータベースである,病院情報システムやそのサブシステムまで遡ってOLAPシステムへ接続する必要があることが分かった. よって,OLAPシステムには①複数メーカのデータベースへ柔軟に接続出来ること,②抽出したデータを集約・集計するためのデータマート機能を備えること,が必要であるとの結論が得られた.これらに加え,インターフェース上で操作しながら大容量のデータを集計するため,高速なレスポンスが要求される.これらを踏まえ検討した結果,オンメモリ型データベースを備えるOLAPシステムを構築した.オンメモリ型データベースはメモリ上にデータを展開するため,非常に高速な集計が可能になる.また,各データベースへの接続は標準的な方式としてODBCを採用した. 実際のインターフェース構築にあたっては,現場で要求されている分析インターフェースのヒアリングを各診療科に実施した.その結果を基づいて,糖尿病患者を分析するインターフェースを構築した.糖尿病患者分析では病名及びHbA1c検査状況から糖尿病患者を抽出し,投薬・合併症検査・HbA1c値により当病院に通院している糖尿病患者の状況を把握できるインターフェースとなっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では,徳島大学病院DWHと接続したOLAPシステムを構築し,病名や投薬・処置や検査結果値などでグルーピング化,クロス集計された各グループの症例について,症例を抽出し,検査結果と診療行為を時系列で閲覧,症例間の比較ができるインターフェースを構築する計画であった.徳島大学病院DWH及び病院情報システムと接続したオンメモリ型データマート搭載OLAPシステムを構築し,内科における糖尿病患者抽出インターフェースの構築・運用をしており,概ね計画通り進展している.ただし,OLAPシステム運用は内科のみであり,診療科ヒアリング結果を元に他科においても運用可能なインターフェースの構築を進める必要があると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度では,まず内科における糖尿病患者抽出インターフェースを更に発展させ,糖尿病患者の治療状況を血液検査結果(HbA1c・HDL-C・LDL-C・血清Cr)及び投薬(インスリン製剤・経口血糖降下薬・高血圧治療薬・高脂血症治療薬),合併症検査(眼科検査)から把握し,治療状況の評価を支援する症例データベース「糖尿病診療ダッシュボード」の構築を行う.これにより,当院における糖尿病患者の状況を把握するだけでなく,症例個々について診療の質評価を支援し,診療において利用可能にする.次に,糖尿病診療ダッシュボードの運用成果を元に,他の疾患についてもOLAPシステムを利用した症例データベースを構築できないか,他科においてもヒアリングを再度実施し,検討する. また,地域ICT広域連携事業「糖尿病及び合併症における病病連携事業」にて運用されているコホートデータベースへの接続も検討する.コホートデータベースには,地域連携ネットワークに参加している医療機関の匿名化されたレセプト電算データが集積されており,医療機関単体だけでなく,ある程度の地域での分析が可能なデータベースである.コホートデータベースシステムはKVS型データベースであるCassandraで構築されており,現在採用しているデータベース接続方式であるODBCでは接続出来ない.この点について技術的な検討を加え,OLAPシステムを改良する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では,糖尿病診療ダッシュボードの構築及びCassandraへのOLAPシステム接続を行う予定である.糖尿病診療ダッシュボードの構築については現行システムの仕様内で対応可能であるため,新たな費用は発生しない見込みである.Cassandraへの接続については新たなデータベース接続インターフェースを構築する必要があるため,この点に研究費を使用する計画である.また,Cassandra接続にあたっては既存の仕組みでは出来ないため,充分な技術的検討・情報収集が不可欠であり,情報収集,打合せ等に旅費等を使用する計画である.また,次年度の繰越額はOLAPシステム接続のためのCassandraインテフェース構築に使用する予定である.
|