研究課題/領域番号 |
24790502
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
玉木 悠 徳島大学, 大学病院, 助教 (40563987)
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キーワード | 二次利用 / OLAP / BI / 糖尿病 / KVS |
研究概要 |
本研究では,容易に任意の項目を組み合わせて集計,検索できるインターフェースを提供し,技術的知識が無くともシステムに蓄積された医療情報の集計,分析を可能にするOLAP(On-Line Analytical Processing)システムの構築を目的としている.これまで,オンメモリ型データマートを備えたBI(Business Intelligence)システムを活用した,糖尿病患者の抽出インタフェースを構築し,臨床研究等において活用している.この結果を踏まえ,診療での活用を考慮し,治療方法による症例抽出と,検査結果による治療結果比較を可能にする糖尿病診療ダッシュボードを開発した.糖尿病診療ダッシュボードでは,薬剤と指導管理・処置・在宅における診療行為を組み合わせ,次の4パターンの症例抽出と,HbA1c値比較を可能にしている. (1)1型糖尿病における治療方法別比較:1型糖尿病症例について,専門的治療(インスリンポンプ,強化インスリン療法等)の導入に得られている治療実績を分析 (2)2型糖尿病における治療方法別比較:2型糖尿病症例について,インスリン療法の方法毎(インスリンは効き方により種類がある),DPP-4阻害薬との併用に得られている治療実績を分析 (3)2型糖尿病の血糖降下薬処方パターン別比較:2型糖尿病症例について,経口血糖降下薬の処方パターン(複数の薬剤を併用する)毎にHbA1c値の傾向を把握し,得られている治療実績を分析 (4)2型糖尿病のGLP-1薬処方症例のパターン別比較:2型糖尿病症例について,GLP-1受容体動作薬を処方している症例についてHbA1c値の傾向を把握し,得られている治療実績を分析 また,地域連携で運用されている,KVS(Key-Value Store)を採用したコホートデータベースへの接続について技術的検討及び,システム開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では,前年度開発した糖尿病患者の抽出インターフェースを発展させ,薬剤と指導管理・処置・在宅における診療行為を組み合わせた,糖尿病治療方法別の症例抽出アルゴリズムを開発した.これをOLAPに導入し,検査結果による治療結果比較を可能にする糖尿病診療ダッシュボードを開発した.徳島大学病院データを使用した抽出結果について,臨床上の確度を専門医の協力を得て検証中であるが,レセプト相当のデータと検査結果値を組み合わせることで,有効な症例抽出が可能であることを示した. また,地域ICT利活用広域連携事業「糖尿病及び合併症における病病連携事業」で構築されたコホートデータベースとの接続についても検討を行った.コホートデータベースはKVSで構築されいる.そのため,RDBへの接続を前提としたBIシステムとの親和性は非常に低い.より簡便で汎用性の高い方式を検討した結果,CassandraとBIシステムの間に通常のRDBを構築し,一時的に分析対象データを蓄積する中間データベースとすることで,BIシステムへのデータ連係を図った.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では治療方法別の症例抽出アルゴリズムを組み込んだ,糖尿病診療ダッシュボードを開発するとともに,コホートデータベースへのOLAPシステムの接続についてシステム開発を行った.コホートデータベースとの接続については,Cassandraに蓄積されているデータのBIシステムへの連係について,一時的に分析対象データを蓄積する中間データベースを設置する方式を取った.Cassandraと中間データベース間の連係については,必要な項目のデータを,バッチ処理でCassandraからXMLファイル形式で採取し,中間データベースへインポートする仕組みとなっている.この仕組みでは,バッチ処理のタイムラグにより,OLAPの特徴であるオンライン分析の即時性が損なわれてしまう.今後の課題として,Cassandraと中間データベース間の連係に,RDB標準のデータ問い合わせ言語SQLに親和性の高いCQL(Cassandra Query Language)の導入等を検討し,即時性を損なわない仕組みの構築を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
コホートデータベースと接続するCassandra接続インタフェースの構築にあたって,技術的検討が重要であり,個々の要素技術について十分な実証試験を行い,プロトタイピングモデルによりシステムの開発を行った.そのため,開発されたシステムによって実証実験を行っている段階であり,実運用に必要なハードウェア構成での構築は翌年度とした. 平成25年度に開発したCassandra接続インタフェースについて,Cassandraに蓄積されている大規模データに対応したハードウェア構成でのシステム構築に充てる.
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