研究課題/領域番号 |
24790513
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
馬谷原 光織 昭和大学, 歯学部, 助教 (30384184)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ポートフォリオ / 言語統計 / 質的研究 / 形態素解析 / 改善・検証サイクル |
研究実績の概要 |
1.定量的に特定学生(個人・集団)を抽出するPTAS-2の開発 PTAS-2を開発はポートフォリオの言語統計量を比較する。学生(質的研究結果)・教員(カテゴリ分け)の双方の観点から検討したカテゴリ情報と、既存PTASの統計情報を詳細に比較検討し、検出目的に沿った学生(個人・集団)抽出ができるPTAS-2を開発する。 成果1:ポートフォリオ間で言語統計的・有意差を検出できた。成果2:与えられた条件に一致するポートフォリオを検出できた。成果3:教師が自覚せずに用いている隠れた評価基準を言語統計値として明示することができた。PTAS-2で提出済みポートフォリオ(文章)から成績不良者などの要支援学生とそれ以外の者を分類することが可能であった。分類精度は7割程度でポートフォリオが作成された各授業の特性である、課題種類や専門用語が分類時に大きな影響があることが示唆された。想定外の成果として教師が自覚していない文章表現の好みやキーワード頻度が教師ごとに異なるといった「評価のクセ」を統計値として明示することができた。これは教師らが公正(均一な)な評価を支援するための情報として、これまでにない新たな指標となる可能性がある。 2.学生の学習姿勢・成果がポートフォリオに反映される過程を分析する インタビューと質問紙によりポートフォリオへ学習姿勢と学習内容がどのように表現されるか、グラウンデッドセオリーの分析手法を用いて、グループ化、カテゴリ化を行う。* 昭和大学歯学部医の倫理委員会 課題名: 学部連携教育の学びに関するアンケート分析とポートフォリオ・テキストマイニング分析を用いた研究 承認番号:2013-018
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は、昨年の成果を踏まえてPTSA-1からPTSA-2としてさらに分析精度を高め、最終目的である要支援学生の早期検知につながるように追加の開発を進めた。H26年度には想定外の成果として、PTAS-2分類器の精度確認の過程で、教師が自覚していない文章表現の好みやキーワード頻度が教師ごとにことなる「評価のクセ」を言語統計値として明示することができた。これは教師らが公正(均一な)な評価を支援するための情報として、これまでにない新たな指標となる可能性がある。H27年度はこの支援情報により教育職経験の少ない新任教員の教育に支援情報が活用できる可能性も視野にいれて開発の成果を整理する。 H27年度は学生インタビューや行動観察記録を用いて、学生ポートフォリオ作成過程の内章面に着目し、「なぜそのように考えたのか」といった質的な研究を進めた。H27年度はこのデータを分析し、さらに研究対象者を増やして研究を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
PTAS-2の結果に基づく検証改善サイクルを確立する ポートフォリオを活用する授業ごとに、継続的にPTAS-2の結果を用いて、授業や指導方法を教員にフィードバックし、「検証改善サイクル」(PDCA)を実践する。 1.本研究の最大の特色は、研究期間内に得られた知見を迅速に教育現場にフィードバックできることである。それによる教育手法の変化は学生ポートフォリオにも変化を及ぼし、研究期間内はPTAS判定の妥当性向上と研究手法の見直し、研究期間後も長期的わたり経年的向上を検証する検証改善サイクルを実践できる。また、本研究手法は、妥当性、合理性を高めるため「教員視点/学生視点」「言語分統計(量的)/インタビュー(質的)」のように同じ事象を複数の視点から分析するトライアンギュレーションを前提とすることである。 2.予想される結果と意義:要支援学生の早期発見、ポートフォリオの内容傾向、授業改善のための学習志向分布を提供し、授業改善に役立てる。授業改善後の結果も同様に分析し、その改善・検証サイクルから多く知見が得られ、本研究成果は「検証改善サイクル」を実践し、医学教育のさらなる向上に寄与するものと確信している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
課題研究の実施および成果は前年度に引きつづき順調に進行していたが、H26年末に予定していたPTAS-2の開発と納品が大幅に遅れることが判明した。そのため、H27年も継続して本課題目標を完遂することを選択した。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初予定されたH26年度計画に沿ったものとなる。分析プログラムの納品に向けて500千円を計上し、これら分析の実施と質的調査継続のための、人件費・謝金として20千円を計上する。
|