研究課題/領域番号 |
24790516
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
可知 悠子 日本医科大学, 医学部, 助教 (10579337)
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キーワード | 社会格差 / 非正規雇用 |
研究概要 |
平成25年度は、非正規雇用の健康影響について3つの研究を実施した。いずれも、厚生労働省より官庁統計のデータを申請し、利用許可を得て行った。 (1) 非正規雇用者における主観的健康感の世帯構造による相違:雇用形態と主観的健康感との関連が、世帯構造によって異なるかを検討した。その結果、女性では雇用形態と主観的健康感との関連は一様ではなく、世帯構造によって異なることが示唆された。とりわけ、ひとり親世帯や単独世帯のように自らが主たる稼ぎ手であり、家族の経済的セーフティネットの弱い世帯の非正規雇用者に、主観的健康感が不良の者が多いことが認められた。一方で、男性では世帯構造による相違は認められなかった。 (2)雇用形態の変化と心理的ストレス反応との関連:中高年の被雇用者を対象とした4年間の後ろ向きコホート研究により、雇用形態の変化と心理的ストレス反応との関連を検討した。その結果、継続的に非正規雇用で働くことや失業状態になることは、その後の心理的ストレスを高めることが示唆された。また、非正規から正規へ雇用形態が変わる場合にも、労働環境の変化などにより心理的ストレスが高まることが示唆された。 (3)非正規雇用が心理的ストレス反応に及ぼす影響:中高年の被雇用者を対象とした全国規模のコホート研究により、非正規雇用が心理的ストレス反応の発生に及ぼす影響を検討した。中高年男性において、非正規雇用で働くことは心理的ストレス反応の発生リスクを2倍以上高めることが示唆された。一方で、女性では有意な関連は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書の平成26、27年度の実施計画にあった「非正規雇用と健康の経時的変化との関連」ならびに「非正規雇用から正規雇用への移行と健康の経時的変化との関連」について研究成果を国内学会で発表したのみならず、英語論文を執筆し現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに当初計画していた研究が概ね完了しているが、平成24、25年の成果は主観的な健康をアウトカムとするものが中心であった。平成26年度は24、25年に引き続き官庁統計を用いて、生活習慣病をアウトカムとし、非正規雇用ならびにそれにより生じた社会経済的格差が健康に及ぼす影響についてより詳細な分析を行い、当該分野の知見を深める予定である。また、非正規雇用の医療アクセスへの影響についても詳細な分析を行う。その成果を学会や海外・国内の学術誌において発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に行う予定であった資料やデータの整理が必要な作業を、翌年度に行うことにしたため、人件費を当初予定よりも使用しなかったため。 平成26年度は複数のアルバイトを雇用し、大量の資料やデータの整理を行ってもらうための人件費を使用する予定である。
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